一年くらい前に優子と早苗と二人で池袋の居酒屋で飲んでいたとき。隣のテーブルでは、数人の男女学生が議論をしていた。その学生たちの中に「ミハナエリカ」という可憐な女性がいた。お酒の勢いもあったが、学生たちの議論は至極真面目に […]
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1-108 尊厳ある遺書
早苗があの殺され方をしたことに犯人の早苗に対しての異常な憎しみが感じられる。早苗は犯人と話しているうちに、犯人の行為の理不尽さに苦しんだのではないだろうか。しかし犯人からの拘束から逃れるすべがなかったのだ。そしてその日が […]
1-107 ほとばしる涙
そして、、、優子は静かに嵐の歌を聴いている。頭に浮かぶのは音楽から流れ湧いてくる快いイメージだった。エンターテイメントの重要な一つは歌の内容と質なのだろうと思う。歌い手の歌う歌が人々の心に快い響きを伝えることができなけれ […]
1-106 人生の苦しみをとぎほぐすarashi
優子と織江は日本に帰るシンガポール航空の機中の人となっている。珍しいことだが、日本からシンガポールへと旅立つときに乗っていた幼い男の子と母親が再び日本に帰るこの飛行機に同乗していたのである。 この機中でもあの親子は楽しそ […]
1-105 陰性と陽性
ピュアプリンセス号はシンガポールの港マリーナ・ベイの片隅に停泊している。ミセスジュリアはデッキの上でうつぶせの状態のままで周りに白いシートが掛けられていた。そのまわりにはバーケードが設置されていた。すでに防護服を着た警察 […]
1-104 世界的な利権と覇権
シンガポール厚生省(Ministry of Health, MOH)は、2009年5月26日、シンガポールで最初の新型(H1N1)インフルエンザを確認しました。この流行が大きな問題になったのは、流行初期にメキシコにおける […]
1-103 静寂の死
ピュアプリンセス号は深夜から速度を上げ、シンガポールへと向かっている。昨夜の騒ぎはまるで嘘のように船内は静けさを保っているが、キッチンの一部では朝の食事の支度に大わらわだった。通常のバイキング方式ではなく、大皿にはたくさ […]
1-102 前夜
「はい、、」「若木です」「そうそう若木さんを呼んでいたのよ」優子は、立ってドアを開けた。「失礼します。私にご用事あると、、、?」若木はお辞儀をした。マスクをしている。「どうぞこちらへ、、、。お忙しいところすみません、、、 […]
1-101 疑惑
優子と織江は部屋に戻った。旅の最終日である明日の朝には、この豪華客船ピュアプリンセス号はシンガポールに到着する。その前の晩にあのような派手なパーティが開かれるとは。しかもこの船の大株主というミセス、ジュリアの誕生日会まで […]
1-100 ウイルス変異特効薬
「私が診たところ、やはり新型インフルエンザだと思われます。ここでは可能なかぎり治療を施します。 明日、シンガポールに到着しますので、入院させて精密に検査を行い、対処するということで母親の了解を得ました。ドクターアデナウア […]
1-99 新型インフルエンザとウイルスの変異
そのスタッフは、そのスィートルームのドアを叩いた。「誰だ!」と部屋から聞こえる。 「スタッフです」「ちょっと待って、、、あなた、医務室に入った?」ドアに向かってジュリアが怒鳴る。「いいえ、、、」「じゃあ、いいわ、入れて」 […]
1-98 かすかな兆候
それは小さな出来事から始まった。いや始まっていた。パティオのその場所の人ごみの中に小さな隙間ができていた。そこに小さな女の子がうずくまっている。自分の子供がうずくまっていることに気づいた母親が背中から心配そうに声をかけた […]
1-97 心顔
パティオでのパーティは続いている。お酒もだいぶ入っているので奏でられる音楽も踊りも人々のパーティを楽しむ笑い声や話し声でかき消されている。子供たちもそここに走り回っている。ジュリアはなんとなく表情が冴えないように見受けら […]
1-96 誕生日のお祝い
「織江、、、もう少し離れて、、、そう、そのぐらいの距離をおいてて、、」「わかった、、、」優子と織江の後方にも次々にジュリアへと挨拶しようとする人々が列をつくっている。中には子供を連れた夫婦もいる。ジュリアはドクターアデナ […]
1-95 嘘
「気づいた?織江」「うん、あれねっ、、、あの男、、、」ジュリアのそばには正装した中年の男性が控えている。ジュリアが笑顔を振りまいて周りのお客たちと話したり、一緒に写真を撮ったりしている。その男はジュリアを隣でサポートかと […]
1-94 船上のパーティ
今日はこの船旅の最後の夜となるので、夕方から船長主催の立食のパーティーが開かれている。船の中央付近にあるパティオにすでに大勢のお客様が集まっている。船はプーケット島を出発しゆっくりとシンガポールの港へと向かっている。明日 […]
1-93 シンガポールからペナン島へ
シンガポールの港を出発した翌日、最初の寄港地マレーシアのペナン島に入港した。午後、食事を済ませると観光客は客船からテンダーボートという小船に乗り込んだ。 ペナン島の岸まで次々とお客を移送する。海はおせいじにもきれいではな […]
1-92 Maria
早苗が一年前、予約したこのスィートルームの部屋の船体での位置関係は最前方にあり、しかも操舵室の上方になる。部屋は二つに仕切られている。その一つはリビングルームで冷蔵庫などテレビなどが設置してある。もう一つはダブルベッドと […]
1-91 日本人クルー
優子は単刀直入に申し出たほうがいいと思った。クルーの村木が日本人ではあるし、忠実に仕事をこなしていると見えたからである。「あの、、、この部屋は約1年前、愛早苗という日本人女性が泊まったことがあると思うんですけれど、、、」 […]
1-90 エグゼクティブのウェルカム
優子と織江は船着き場に到着すると、そのタクシー運転手に丁寧に挨拶をして別れた。午前11時の乗船にはまだ間があった。その船着場建物の構内に入ると長い行列がいくつか見えた。すでにたくさんの人たちが順番を待って並んでいるし、軒 […]
1-89 豪華客船の女旅
早苗がシンガポールで宿泊していたマンダリンホテルはいつものように早苗の勤務する会社関係が使う日本の旅行社を通じてシングルを予約していた。繁華街から離れたそのマンダリンホテルは日本流に言うとビジネスホテルを少しだけ高級感を […]
1-88 深い闇
織江は優子と共にシンガポールへ向かうことを希望し、今二人とも機内にいる。早苗と同じようなスケジュールを組んで出発は金曜日にした。 2009年10月18日(日)に現地のマンダリンホテルをチェックアウトする予定にしている。早 […]
1-87 痕跡からの推理
「私は近々シンガポールに行こうと思います。早苗が行ったと思われるところに」「賛成。お願いします」「ただ今後のことだけど警察や何かで犯人が判明したとしても私たちがかたき討ちということはしないつもりよ。憎しみからの仕返しは憎 […]
1-86 超極小生命体の研究
「しかしそれは夢であって、たとえば遠くに見える太陽や月を手に取るようにするぐらい難しいとも早苗は言っていた。優子から提案やアドバイスがあって手始めてみても、何も知らないことから始めなければならなかった。いったいどこから手 […]
1-85 人のためになるものを提供したい
「袋詰めして海中に沈めたという点だと言っていた。海中に沈めるとたとえ重しを乗せて沈めたとしても時間が経つと遺体からガスが出て浮上しようとするらしいの。たから発覚の恐れがある。もしそうだとしたらプロはあまり使わない方法だと […]
1-84 原因究明
「集まってもらったテーマは、今後の大事な方針についてです。その方針についての中には当然、早苗の事件も含まれます。私たちが現在、知り得る早苗に関するものでは情報が少ないと思います。いままでの情報は①嵐の台北でのコンサート会 […]
1-83 saveearthのメンバー
愛早苗の父の啓介は埼玉でコンビニエンスストアを経営している。母の恵子は結婚後ほどなくして良太と早苗を産んだ。両親はこれといった趣味がなく、たまの温泉旅行が楽しみで、老後のお金を貯めるのが趣味みたいなものになっていた。子供 […]
1-82 安心と安全とは
愛早苗は28才だった。あまりにも若すぎた。人は大事がなければ老衰か、多くは病をもって死を迎えることだろう。事故はあるにはあるが、まさか事件に巻き込まれることなど想像がつかない。それに愛早苗のように他国でこのようなことにな […]
1-81 世界に一つもない事例
ここはシンガポール某大学法医学部特別教室にて現地の監察医が説明をし、その都度、通訳官が日本語に通訳をしている。そばには検視官、警察官が同席している。日本からは行方不明だった愛早苗の父、愛啓介と母、恵子とともに探偵社の和田 […]
1-80 ゼロベースの心
娘の早苗の行方が分からなくなってもう一年近くなる。早々に父の愛啓介は探偵社の和田とともにシンガポールへ赴き、シンガポールの警察に早苗の行方不明の調査を依頼していた。和田はいつでもDNA鑑定に使用できるように早苗に関する […]
1-79 謎
探偵社「二人の幸せ研究所」の和田は愛早苗の父の愛啓介と親友の泉優子に電話連絡をした。ジャニーズの嵐を誰かが撮った動画の中の男についての報告と心当たりがあるかどうかについてである。それとともに愛啓介には明日、探偵社のスタッ […]
1-78 静かなる池に小石を投げ入れてみる
ここは探偵社「二人の幸せ研究所」である。「これです」とチエは切り出した。百聞は一見にしかず。問題の部分は話すよりも上司の和田にはyoutubeにあるshotennokiを見せたほうが早いのだ。「、、、どれ?、、、、」ジ […]
1-77 動き出すlove so seeet
輝いたのは鏡でも太陽でもなくて 君だと気付いたときからあの涙ぐむ雲のずっと上には微笑む月 Love Story またひとつ 傷ついた夢は 昨日の彼方へ空に響け 愛の歌 思い出ずっと ずっと忘れない空 ふたりが離れていって […]
1-76 例外
優子は二つ折りにした座布団を敷き、お尻の後方半分くらいを乗せ、半跏趺坐(はんかふざ)の足組をした。前方に倒していた上半身を静かに垂直方向に起こしてゆく。腰椎下部をぐっと前に出すようにして左右に揺らしながら天と地の中に身体 […]
1-75 野望
幼き頃から大きな病気なったことはなく健康だと思っていた純一。しかし最近の身体の調子が何が何だかわからないでいる。いつものようになんともない状態がほとんどなのたが突然、少しずつおかしくなってくる。そしてついには立っていられ […]
1-74 パニック障害
純一はいくつかの病院で診てもらった。しかし納得がいくような返事がもらえていない。調べてもらうといくつかの臓器の機能は年相応には弱っているらしい。ところが特に異常なところはみられないという。別の医者は「そうですねぇ、、スト […]
1-73 初めての異常
{ 、、、なっ、、、}純一は自分に異常を感じ始めている。 いままでにないものを感じている。{、、どうしたんだ、、、}すでに背中と両脇に冷や汗が出始めていた。それでも自分の資料を片付けているふうを装っている。その純一にクリ […]
1-72 異常前
その中心的な役割にあったのが社長秘書の一人、若林奈美だった。奈美は新宿にある本社で社長秘書数人の中の一人として勤務していた。社長秘書数人はプロジェクトごとに分かれることがある。いわばプロジェクトごとのメッセンジャーであり […]
1-71 戦略
泉純一と浮気相手である若林奈美はクリーンシェア社で繋がっていたことが判明した。「二人の幸せ研究所」では平行して純一の銀行関連についての割り出し調査も行おうとしている。調べていくと純一の仕事についてはあるプロジェクトが進ん […]
1-70 生き物の怖さ
その日、探偵社「二つの幸せ研究所」の和田は依頼者の泉優子に二回目の調査結果について説明している。夫の泉純一の浮気相手は若林奈美という。どこかしらエクゾチックな顔だちの27歳である。東京都中野区に一人住まいだった。勤め先は […]
1-69 seveearth
「seveearth」という会の要旨内容はこうである。魂は現世及び霊界を通じて永遠に生きて紆余曲折はあるものの成長を続ける。霊界は魂の故郷である。人は魂 ( 心 ) の成長のためにこの世に生まれ、この世では死するまで肉体 […]
1-68 日本人の志
優子は大学時代、仲良しの女性5人で「seveearth」いう会を作った。この5人は日本の幕末明治時代に活躍した偉人たちのことが大好だった。話をしているうちに武士の志にちなんだ会を作ろうということになったのである。1853 […]
1-67 老後
人は身体のそこここが思うようにならないようになると歳を重ねていると気づくものである。自分たち夫婦が若いころ・・・・それは戦後復興期の経済は右肩上がりの波が続いた。君江は君江なりに夫の経営する印刷会社の仕事を手伝い、家族の […]
1-66 家族の問題
今日の夕食は君江と光男とゆむいは同じテーブルで食事をした。二人は初めてではないのにまるでめずらしいものを見るような様子だったし、意識しているせいかちらちらと互いをうかがう感じが君江にはおかしかった。光男は日頃から用事がな […]
1-65波打つ生命力
昨晩、娘の優子が孫のゆむいを「一晩、預かってね」連れてきた。{ 見た目には普通に見えるんだけど、、、 }とゆむいの様子を見て君江は思う。夕食を終え、ゆむいは窓際にある鉢植えの花々のそばで絵本を見ている。{ やっぱり女の子 […]
1-64 交渉の結果
「ルルルルルルル、、、ルルルルルル、、、はい、もしもし、、、あぁ、、そう、、、そうわかった。それでケンちゃんはどっちがいい? 今日、泊まるところなんだけど温泉じゃなくてもいい? あ、そう、わかった。お任せでいいの? うん […]
1-63 交渉
和田はケンに連絡をしてみることにした。「どうだ、ケン、今どこだ?」「ついさっき伊豆高原に着きました。そちらの場所を探しています」「そうか、どうしてもわからなくなったら連絡くれ」{ やっぱり、先ほどまでのケンは伊豆高原に到 […]
1-62 人の特殊能力
横を向いたまま応えるチエが急に大人びたように見える。「はあ、そういう考え方もあるんだねぇ、、、チエ、ケンは今、どの辺を走っているかメールで尋ねてみてくれ」「はい、、」チエは携帯を出して得意のメールを打ち始める。夜の暗さの […]
1-61 死んでもらいます。
浴衣に着替えた二人が下駄の歯を敷いてある砂利をぎしり、ぎしりときしませながら、ペンション「ソリエ」の出入り口から出てきた。 「おい、あれは対と女だぞ。 どうだ、そうだろ?」 「あ~、そうです、そうです」 和田は早速ビデオ […]
1-60 半月
1-60 夜空のたもと遠く前方に停車しているタクシーのほうからそのエンジン音の強弱が伝わってくる。{ あのタクシーはユーターンをしているのだろう。ということは対と女はそのタクシーから降りたはず }やがて前方のタクシーがこ […]