1-126 縁

数限りない出会い。
無数の人たちが悠久の歴史の中で出会っている。
今現実に起きている出会いは奇跡と言える。
推測も憶測も届かない現実。
出会いばかりではなく私たちは奇跡の中で生活している。
新たな奇跡は出会いから始まる。
縁、enishi。
しかし出会いは奇跡ではなく必然だった。

「あのう、、、すみません」と店長の宇多田は4人に声をかけた。
「はい、、」優子、織江、詩、龍は宇多田を見上げた。
恐縮そうに立っている黒のズボンに白いシャツ、いかめしい体つきの男が立っている。
「覚えていらっしゃいますか?」とおどろおどろしくしている。
「あっ、、なんとなく」と詩が応えた。
「2年くらい前に愛早苗さんと一緒にいらした方ではないですか?」と言いながら店長の宇多田は優子に顔を向けた。
「はい、覚えています。、、、、この店に来たのはそういえば2008年の8月下旬、ジャニーズが「嵐」の海外公演を発表した直後でしたから、その時期のことを覚えています。
そのとき早苗と一緒にここでお茶をさせていただいたときのことをみんなに話したんですよ」
「10年以上前の学生だった頃のみなさんが、ここに来られているのを見で懐かしく思い出していたのです」
「そうですよねぇ、私たちあなたのことを{ あれっ、あの人だって } 思い出していたんですよ。
この付近も様変わりしたみたいですけど、この店の雰囲気は昔のままで懐かしんでいたんですよ4人で」と龍が宇多田に笑顔を向けた。
「ありがとうございます、、、」と宇多田はもじもじしている。
「もしかしてこの店のオーナーだったんですか?」
「とんでもないです、、雇われ店長です。
私、宇多田だと言います。
池袋とここの店の雰囲気が好きでいつのまにか10年以上も経ってしまいました。早いです」

宇多田は10年以上も前から優子に恋い焦がれていたことを言い出せないでもじもじしている。

「そうですか、、お変わりありませんか?」
「ありがとうございます。今日は以前は尾崎さんとご一緒に来られていた愛さんがおられないのでどうしたのかな?と思いまして、、、、」
「、、、、実は、愛は亡くなったのです、、、」
「えっ、、、何?、、、なんておっしゃったのですか?」
「実は、愛早苗はちょっとしたことで亡くなったのです」
それを聞いた宇多田の瞳は突然、宙に泳いで上を向いている。
しばらく沈黙が流れる。
そして突然、宇多田は崩れ落ちそうになったが、ようやく持ちこたえた。
「どうしたんですか?、、、、、」4人は宇多田に注目する。
、、、、、、、、、、
「2年前ここに愛さんと尾崎さんがいらっしゃったとき、尾崎さんだけが店を出て行かれたのです。
それでお一人になった愛早苗さんとお話しする機会があったのです」
「えっ、そうなんですか?、、、ここでですか?」
「はい、お時間があると言われたので外でもお話しすることになったのです」
「外で、と言うと?、、、」
「ちょっとお酒でも飲もうかということになって、、、」とさらにもじもじしている。
「へぇ、、私たち初めて聞くことです。
よかったら、詳しく聞かせてもらえませんか?」
4人はいっせいに宇多田に視線を向けている。
「はい、でも愛さんが亡くなったというのはどういうことなのでしょうか?」
「ニュースはご覧になっていませんか?」
「僕は新聞とかテレビはあまり見ないもので、、、ニュースになったのですか?」
「実は、早苗は事件に巻き込まれたんです。それもシンガポールで、、、」
「事件に巻き込まれた?、、シンガポール?、、」宇多田は、そばにあった椅子を寄せて座った。
「どういうことでしょうか?」
「彼女はこの店を訪れた数か月後に仕事でシンガポールに行ったのです。
ですが、彼女は現地で仕事をする前の観光途中で事件に巻き込まれて亡くなったのです」
「それがニュースになったと?」
「はい、行方不明になったので、すぐにニュースにはなりませんでした。
行方不明になった約1年後にシンガポールの付近の海で発見されたのです。
しかしもうすでに白骨化していて、、、調べてみると殺人事件だったのです」
「殺人事件?」
「そうです。早苗は殺されたのです」
「、、、、」宇多田は下を向きながら両手を握りしめた。
「宇多田さん、、、何かご存じのことがあるようですね、、、?」
「、、、、、」

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