1-121 極小生命体の心と頭脳

「そして心と肉体の関連性は自然界と同様の原理作用の中で動くだろうと思いました。であれば、心も体もバランスを保つ方向へと動くことになる。逆らうことがあれば生命の原理によって正される方向に向かう。その原理の動きの指向性の中で …

1-120 心と宇宙の原理

「チエさん、ありがとうございました。早苗のご家族にとって、一年以上たった今もショックで憂鬱な日々が続いています。私も学生の頃からの早苗と過ごした日々がつい先日のように思えてならないのです。この事件は早苗が送ってくれたジャ …

1-119 特異点

「皆さん、ここで私が申し上げたいのは早苗さんの事件の特異点です。私たちが見聞きする殺人事件とは何か違う感じがしませんか?そんな気がしたので、早苗さんの殺人事件をまとめてみたのです。①日本ではなくシンガポールで事件が起きた …

1-118 香港人 

「失礼しました。、、さて、、敵と申しましすのは、、、私たちにとってもやっかいな浮気のことです。洋の東西を問わず、大昔から、、、あぁ、、人間の性とでもいうのでしょうか、、、妻のミセス、ジュリアとその夫の王紅東は香港の飲食業 …

1-117 敵、現る

「しかし不思議よねえ、、、人がベランダまで出て、そこから落ちるなんて、、、しかも夜明け前のことなんでしょう?、、、」「考えられないわ、、ミセス、ジュリアは新型インフルエンザに罹っていたんでしょう、、、むしろ具合が悪くって …

1-116 誘導操作

「張、ジュリアが新型インフルエンザの陽性と判明した翌日の朝方、シンガポールの港に向かっている船のベランダから落ちて死んだ。て、、ねぇ、しかも密室って、、」「、、密室、、そう言われれば、、、ねぇ、、?」「チンはそう言ってま …

1-115 薬物の疑惑

 「ところが皆さん、、、、」とチエはまたバシッと筒状にした用紙でテーブルを叩きつけた。思惟にふけっていた優子、織江、詩、龍それぞれがチエを注目する。「、、、この李という男を当然、シンガポール警察は取り調べました。早苗さん …

1-114 錯綜の疑惑

「でもこの李ガンスという男、早苗とは仕事関係だよね。優子の顔を知っていたというのもいつからなのかしら、、、、」「私が早苗と最後に会ったのは去年の夏ごろ、その日一緒に居酒屋に行って、そして早苗のマンションにも行った。それ以 …

1-113 嵐ファンネットワーク

「その前に、、、優子宛に招待状がフランクフルトから届いています」と龍が手を挙げて発言した。「私の先生のドクタークルト・ベルトハイムからです。先生に早苗の仕事や事件のことを話しましたら、ぜひこの機会に優子にお話ししたいこと …

1-112 岐路

「あのとき、、、もしもこうしていたら、、、、」 「あの頃の自分にもう一度、戻りやり直したい、、、」 と過去を振り帰ることは誰もが体験することだろう。その当時の選択肢をどこまで煎じ詰めていたのかというと、 そうではなかった …

1-111 幸せへの道

それは優子にとって思わぬことだった。早苗が辿った心の軌跡を追憶することは、事件の真相を追求する以上に優子を考えさせた。早苗が悲惨な死を迎えたことに目を奪われて、その事件の真相だけを考えていた優子たちだった。しかし全く考え …

1-110 違和感

嵐の歌を聴いているうちにいつのまにか眠り込んでいた織江は目を覚ました。隣を見るとあの気丈な優子が目を閉じ、ときに小刻みに震えている。一筋の涙が見えた。織江は前を向きなおし再び目を閉じた。嵐の歌を消した。織江にしても早苗の …

1-109 Love

一年くらい前に優子と早苗と二人で池袋の居酒屋で飲んでいたとき。隣のテーブルでは、数人の男女学生が議論をしていた。その学生たちの中に「ミハナエリカ」という可憐な女性がいた。お酒の勢いもあったが、学生たちの議論は至極真面目に …

1-108 尊厳ある遺書

早苗があの殺され方をしたことに犯人の早苗に対しての異常な憎しみが感じられる。早苗は犯人と話しているうちに、犯人の行為の理不尽さに苦しんだのではないだろうか。しかし犯人からの拘束から逃れるすべがなかったのだ。そしてその日が …

1-107 ほとばしる涙

そして、、、優子は静かに嵐の歌を聴いている。頭に浮かぶのは音楽から流れ湧いてくる快いイメージだった。エンターテイメントの重要な一つは歌の内容と質なのだろうと思う。歌い手の歌う歌が人々の心に快い響きを伝えることができなけれ …

1-106 人生の苦しみをとぎほぐすarashi

優子と織江は日本に帰るシンガポール航空の機中の人となっている。珍しいことだが、日本からシンガポールへと旅立つときに乗っていた幼い男の子と母親が再び日本に帰るこの飛行機に同乗していたのである。 この機中でもあの親子は楽しそ …

1-105 陰性と陽性

ピュアプリンセス号はシンガポールの港マリーナ・ベイの片隅に停泊している。ミセスジュリアはデッキの上でうつぶせの状態のままで周りに白いシートが掛けられていた。そのまわりにはバーケードが設置されていた。すでに防護服を着た警察 …

1-104 世界的な利権と覇権

シンガポール厚生省(Ministry of Health, MOH)は、2009年5月26日、シンガポールで最初の新型(H1N1)インフルエンザを確認しました。この流行が大きな問題になったのは、流行初期にメキシコにおける …

1-103 静寂の死

ピュアプリンセス号は深夜から速度を上げ、シンガポールへと向かっている。昨夜の騒ぎはまるで嘘のように船内は静けさを保っているが、キッチンの一部では朝の食事の支度に大わらわだった。通常のバイキング方式ではなく、大皿にはたくさ …

1-102 前夜

「はい、、」「若木です」「そうそう若木さんを呼んでいたのよ」優子は、立ってドアを開けた。「失礼します。私にご用事あると、、、?」若木はお辞儀をした。マスクをしている。「どうぞこちらへ、、、。お忙しいところすみません、、、 …

1-101 疑惑

優子と織江は部屋に戻った。旅の最終日である明日の朝には、この豪華客船ピュアプリンセス号はシンガポールに到着する。その前の晩にあのような派手なパーティが開かれるとは。しかもこの船の大株主というミセス、ジュリアの誕生日会まで …

1-100 ウイルス変異特効薬

「私が診たところ、やはり新型インフルエンザだと思われます。ここでは可能なかぎり治療を施します。 明日、シンガポールに到着しますので、入院させて精密に検査を行い、対処するということで母親の了解を得ました。ドクターアデナウア …

1-99 新型インフルエンザとウイルスの変異

そのスタッフは、そのスィートルームのドアを叩いた。「誰だ!」と部屋から聞こえる。 「スタッフです」「ちょっと待って、、、あなた、医務室に入った?」ドアに向かってジュリアが怒鳴る。「いいえ、、、」「じゃあ、いいわ、入れて」 …

1-98 かすかな兆候

それは小さな出来事から始まった。いや始まっていた。パティオのその場所の人ごみの中に小さな隙間ができていた。そこに小さな女の子がうずくまっている。自分の子供がうずくまっていることに気づいた母親が背中から心配そうに声をかけた …

1-97 心顔

パティオでのパーティは続いている。お酒もだいぶ入っているので奏でられる音楽も踊りも人々のパーティを楽しむ笑い声や話し声でかき消されている。子供たちもそここに走り回っている。ジュリアはなんとなく表情が冴えないように見受けら …

1-96 誕生日のお祝い

「織江、、、もう少し離れて、、、そう、そのぐらいの距離をおいてて、、」「わかった、、、」優子と織江の後方にも次々にジュリアへと挨拶しようとする人々が列をつくっている。中には子供を連れた夫婦もいる。ジュリアはドクターアデナ …

1-95 嘘

「気づいた?織江」「うん、あれねっ、、、あの男、、、」ジュリアのそばには正装した中年の男性が控えている。ジュリアが笑顔を振りまいて周りのお客たちと話したり、一緒に写真を撮ったりしている。その男はジュリアを隣でサポートかと …

1-94 船上のパーティ

今日はこの船旅の最後の夜となるので、夕方から船長主催の立食のパーティーが開かれている。船の中央付近にあるパティオにすでに大勢のお客様が集まっている。船はプーケット島を出発しゆっくりとシンガポールの港へと向かっている。明日 …

1-93 シンガポールからペナン島へ

シンガポールの港を出発した翌日、最初の寄港地マレーシアのペナン島に入港した。午後、食事を済ませると観光客は客船からテンダーボートという小船に乗り込んだ。 ペナン島の岸まで次々とお客を移送する。海はおせいじにもきれいではな …

1-92 Maria 

早苗が一年前、予約したこのスィートルームの部屋の船体での位置関係は最前方にあり、しかも操舵室の上方になる。部屋は二つに仕切られている。その一つはリビングルームで冷蔵庫などテレビなどが設置してある。もう一つはダブルベッドと …

1-91 日本人クルー

優子は単刀直入に申し出たほうがいいと思った。クルーの村木が日本人ではあるし、忠実に仕事をこなしていると見えたからである。「あの、、、この部屋は約1年前、愛早苗という日本人女性が泊まったことがあると思うんですけれど、、、」 …

1-90 エグゼクティブのウェルカム

優子と織江は船着き場に到着すると、そのタクシー運転手に丁寧に挨拶をして別れた。午前11時の乗船にはまだ間があった。その船着場建物の構内に入ると長い行列がいくつか見えた。すでにたくさんの人たちが順番を待って並んでいるし、軒 …

1-89 豪華客船の女旅

早苗がシンガポールで宿泊していたマンダリンホテルはいつものように早苗の勤務する会社関係が使う日本の旅行社を通じてシングルを予約していた。繁華街から離れたそのマンダリンホテルは日本流に言うとビジネスホテルを少しだけ高級感を …

1-88 深い闇

織江は優子と共にシンガポールへ向かうことを希望し、今二人とも機内にいる。早苗と同じようなスケジュールを組んで出発は金曜日にした。 2009年10月18日(日)に現地のマンダリンホテルをチェックアウトする予定にしている。早 …

1-87 痕跡からの推理

「私は近々シンガポールに行こうと思います。早苗が行ったと思われるところに」「賛成。お願いします」「ただ今後のことだけど警察や何かで犯人が判明したとしても私たちがかたき討ちということはしないつもりよ。憎しみからの仕返しは憎 …

1-86 超極小生命体の研究

「しかしそれは夢であって、たとえば遠くに見える太陽や月を手に取るようにするぐらい難しいとも早苗は言っていた。優子から提案やアドバイスがあって手始めてみても、何も知らないことから始めなければならなかった。いったいどこから手 …

1-85 人のためになるものを提供したい

「袋詰めして海中に沈めたという点だと言っていた。海中に沈めるとたとえ重しを乗せて沈めたとしても時間が経つと遺体からガスが出て浮上しようとするらしいの。たから発覚の恐れがある。もしそうだとしたらプロはあまり使わない方法だと …

1-84 原因究明

「集まってもらったテーマは、今後の大事な方針についてです。その方針についての中には当然、早苗の事件も含まれます。私たちが現在、知り得る早苗に関するものでは情報が少ないと思います。いままでの情報は①嵐の台北でのコンサート会 …

1-83 saveearthのメンバー

愛早苗の父の啓介は埼玉でコンビニエンスストアを経営している。母の恵子は結婚後ほどなくして良太と早苗を産んだ。両親はこれといった趣味がなく、たまの温泉旅行が楽しみで、老後のお金を貯めるのが趣味みたいなものになっていた。子供 …

1-82 安心と安全とは

愛早苗は28才だった。あまりにも若すぎた。人は大事がなければ老衰か、多くは病をもって死を迎えることだろう。事故はあるにはあるが、まさか事件に巻き込まれることなど想像がつかない。それに愛早苗のように他国でこのようなことにな …

1-81 世界に一つもない事例

ここはシンガポール某大学法医学部特別教室にて現地の監察医が説明をし、その都度、通訳官が日本語に通訳をしている。そばには検視官、警察官が同席している。日本からは行方不明だった愛早苗の父、愛啓介と母、恵子とともに探偵社の和田 …

1-80 ゼロベースの心

 娘の早苗の行方が分からなくなってもう一年近くなる。早々に父の愛啓介は探偵社の和田とともにシンガポールへ赴き、シンガポールの警察に早苗の行方不明の調査を依頼していた。和田はいつでもDNA鑑定に使用できるように早苗に関する …

1-79 謎 

探偵社「二人の幸せ研究所」の和田は愛早苗の父の愛啓介と親友の泉優子に電話連絡をした。ジャニーズの嵐を誰かが撮った動画の中の男についての報告と心当たりがあるかどうかについてである。それとともに愛啓介には明日、探偵社のスタッ …

1-78 静かなる池に小石を投げ入れてみる

 ここは探偵社「二人の幸せ研究所」である。「これです」とチエは切り出した。百聞は一見にしかず。問題の部分は話すよりも上司の和田にはyoutubeにあるshotennokiを見せたほうが早いのだ。「、、、どれ?、、、、」ジ …

1-77 動き出すlove so seeet

輝いたのは鏡でも太陽でもなくて 君だと気付いたときからあの涙ぐむ雲のずっと上には微笑む月 Love Story またひとつ 傷ついた夢は 昨日の彼方へ空に響け 愛の歌 思い出ずっと ずっと忘れない空 ふたりが離れていって …

1-76 例外

優子は二つ折りにした座布団を敷き、お尻の後方半分くらいを乗せ、半跏趺坐(はんかふざ)の足組をした。前方に倒していた上半身を静かに垂直方向に起こしてゆく。腰椎下部をぐっと前に出すようにして左右に揺らしながら天と地の中に身体 …

1-75 野望

幼き頃から大きな病気なったことはなく健康だと思っていた純一。しかし最近の身体の調子が何が何だかわからないでいる。いつものようになんともない状態がほとんどなのたが突然、少しずつおかしくなってくる。そしてついには立っていられ …

1-74 パニック障害

純一はいくつかの病院で診てもらった。しかし納得がいくような返事がもらえていない。調べてもらうといくつかの臓器の機能は年相応には弱っているらしい。ところが特に異常なところはみられないという。別の医者は「そうですねぇ、、スト …

1-73 初めての異常

{ 、、、なっ、、、}純一は自分に異常を感じ始めている。 いままでにないものを感じている。{、、どうしたんだ、、、}すでに背中と両脇に冷や汗が出始めていた。それでも自分の資料を片付けているふうを装っている。その純一にクリ …

1-72 異常前

その中心的な役割にあったのが社長秘書の一人、若林奈美だった。奈美は新宿にある本社で社長秘書数人の中の一人として勤務していた。社長秘書数人はプロジェクトごとに分かれることがある。いわばプロジェクトごとのメッセンジャーであり …