1-97 心顔

パティオでのパーティは続いている。お酒もだいぶ入っているので奏でられる音楽も踊りも人々のパーティを楽しむ笑い声や話し声でかき消されている。子供たちもそここに走り回っている。
ジュリアはなんとなく表情が冴えないように見受けられた。しかし自分の誕生日を祝ってくれる人々の列はまだ残っている。隣の男もまだ用意されているプレゼントを次々に一人一人に渡している。
子供連れの夫婦の際には、母親がそれまで歩いていた女の子を抱き上げてジュリアと顔を合わせるようにして話をしている。ジュリアはその女の子に対して笑みを絶やさなかった。
「ありがとう、、ありがとう、、今日はよく来てくれましたね。来年もどうぞ楽しみにしててね」と言って、かわいい女の子の左頬をジュリアのグローブ越しの右人差し指でつつくように触れた。するといままで少しむずかしそうにして母親に抱かれていた女の子は、ふと「ク、シュン、、」とくしゃみをした。
「あらあら、もう遅いから、早く温まって寝ようね」とジュリアが言うと母親が「まぁ、お気遣いありがとうございます」といって、夫婦とその子供分それぞれのプレゼントを隣のその男から貰っていた。次々にお客は続いている。しかしだいぶ並んでいる人々の数は少なくなってはいる。
優子と織江はパーティが行われているパティオの片隅で二人の様子を見守りながら話をしている。
「どうだった?織江」
「完全におかしい、あの二人」
「ビデオは撮れた?」
「もちろん、、自信はないけど、、大方は大丈夫だとは思うけど、、、、」
「でも優子、ジュリアに何と言ってたの、、、?」
「ふふふふ、、、、」
「むしろ私のほうがびっくりした。最初、優子を見た時のあの男の反応の速さ。、、それはジュリアに話しかける前だった。私たちのことは知らないはずなのに、、、なぜ?、、、、、しかもジュリアのほうは優子の顔を見ても最初、何も感じていなかった。ジュリアの顔の表情と態度が変わっていったのは優子と話をしていく途中からよ。あの男とジュリアの表情の違いに時間差が確かにあった。それに優子が話をしていくうちにみるみるジュリアの顔の表情が変わっていったわ、、、」
「ジュリアとあの男はもともと私たちのことは全く見たことも聞いたこともないはず、、、しかも、、、」
「しかも、、、」
「しかも、早苗のことは、もし知っていても他人事のはずだったのにね」
「!」
「、、、、、、」
そう二人が話をしているとパティオの一部で異変が起こりつつあった。
人々の中に小さな波が生じていた。

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