1-40 いじめからの回避 

純一の望みを考えると美佐子は昔を思い出す。美佐子の夫は子供たちが幼いころに交通事故で亡くなっていた。生前の夫は普通ではなかった。賭け事が大好きで酒は毎日あびるように飲んだ。仕事は土木関係で天気が良ければ出て行って働いては …

1-39 いじめと教師

母からなにがしかのお金を持たされていた純一たち兄弟だったのだが、しかしお金があったから、純一はクラスメイトの一部の不良たちから執拗にまとわりつかれたのかもしれない。いじめというもの見てもまわりの人の多くは助けようとはせず …

1-38 母と息子たち

その頃、息子の純一が東京で事業を起こすとの意気込みを示したのである。東京は大阪から新幹線で2時間ちょっとくらいではあるが、美佐子にすれば純一がもし、この大阪から離れて生活するというのだからすこしばかり滅入ってしまう。「会 …

1-37 転機

、、、その方法、、、、、義三は経営していた印刷会社をたたむと同時に所有していた不動産を売却することにしたのである。昭和の高度成長時代に勧められるままに土地や購入していたマンションが、いくつかあった。そのいくつかの不動産を …

1-36 起業と閉業

聞いてみると夫の勤めている会社の早期退職希望者の募集に応じることにしたというのだ。優子は{ それは相談ではなくて、もうすでに決めていることじゃないの }と思ったが口に出しては言わなかった。バブルのはじけた数年後のことだっ …

1-35 結婚のとき

{ 今日は何時に帰るのだろうか?、、、、 }それでもそんな淡い期待をしている自分に気づく。{ 私たち夫婦がこんなにギクシャクし始めたのは、、、、 }「結婚と恋愛とは違う」とはよく聞くことで、恋愛している熱い二人にはまわり …

1-34 永久に生きる

流れる川の上流を根源まで辿っていけばそれは無数の水滴にたどりつく。 水滴一粒一粒は結び合いながら川の流れとなり大海へと向かっている。 人生という川と海に漂いながら、人は嘆き。苦しみ。歓喜する。欲望を追求し。優劣を比較し。 …

1-33 松本潤の突飛な行動

コンサート会場の出入り口では係員にチケットを渡すとそれを器械に通し、本物かどうかをチェックしたのちに通過することになる。なるほどここでチケットが本物か偽物かがわかるのである。とすればさっきの偽物をつかまされた二人の日本人 …

1-32 嵐の上海公演

2008年11月14日、チエは嵐の上海のコンサートに参加しながら行方不明の愛早苗を探すべく上海市内にある早苗が予約していたホテルに泊まることにした。どう調べてみても彼女はチェックインはしておらず気配さえなかった。翌日、チ …

1-31 埃の調査

チエは口惜しそうな顔をし、ソウルでの早苗の形跡は見つからなかったと報告した。「そうか、わかった。それで由比、、君のほうの早苗の自宅マンションのほうばどうっだった?」「あ、はい興味深いものがでました。監視カメラの画像では1 …

1-30 シンガポールでの行方調査

ここは探偵社「二人の幸せ研究所」の会議室。和田所長がシンガポールから、そして調査スタッフのチエは韓国のソウルから帰国したあと、ほかのスタッフとともに会議室でミーティングが行われていた。和田所長が説明している。「2008年 …

1-29 韓国の嵐ファン

チエは嵐のコンサートが始まる前にその会場となるフェンシング競技場の周辺で早苗を見つけることができなかった。このソウルの会場では、日本のどの会場よりも厳しいチェックが待っているように思っていたのだが拍子抜けがした。というの …

1-28 嵐のソウルコンサート会場

チエはこの公演当日、早めにフェンシング競技場に到着した。というのは、もし早苗が嵐のソウル公演に来るとすれば、当日の朝から販売される嵐のグッズを購入するに違いないとの早苗の親友である泉優子は言っていたからである。早苗は早め …

1-27 嵐のコンサートチケット

夏も過ぎ去った2008年10月30日、探偵社の所長である和田と行方不明になっている早苗の父の愛啓介はシンガポールへ、そして同じ日、スタッフのチエはジャニーズの嵐が開催するソウルへ向けて飛び立った。シンガポールは一年中常夏 …

1-26 依頼者からの電話

純一の浮気調査報告書を優子に渡した数日後、、、その優子からの電話だった。和田に一通りの挨拶をしたあと、、、優子は言い出した。「実はこの間の調査の結果資料を見直したのですが、さすがプロの方だなと思いました。きれいに証拠が撮 …

1-25浮気調査結果

和田のイヤホンから聞こえるのは女の声だった。「、、ふふふっ、、ねぇ、私もいい年になってきたのょ、、どうなっているの、うちのマミーも心配しているし、、」その女の声が聞こえてきた。探偵社「二つの幸せ研究所」のスタッフが泉優子 …

1-24 シンガポール機内にて

依頼された翌々日、探偵の和田は早苗の父である愛啓介とともに娘の早苗の消息を探すべくシンガポールへ向けて飛び立つことになった。機上になった二人の話が一段落したあと、和田はどっぷりと座席に深く座り、思いにふけっている。先ほど …

1-23 煩悩のともしび

後ろ側にあるベッドで宇多田は眠っている。したたかに飲んだウィスキーのせいで、ときどき胸を膨らませている。金曜日の夜でも駅近くのMホテルには禁煙室があった。早苗は居酒屋を出たあと宇多田と別れてもよかったのだが、もう少し相談 …

1-22 渦巻く恋心

宇多田の胸中に渦巻くものがあった。早苗の話によると優子はすでに結婚しているというのである。早苗としては宇多田が優子にただならぬ想いをよせていたことを今日、知ったばかりだったが、そうであるなら宇多田に優子の状況を最初から言 …

1-21 嵐の海外ツアー

早苗はウファに入店してきた優子に手を振った。宇多田はすれ違いに優子に会釈をしながら早苗のテーブルから遠ざかった。優子は「あ~、暑いわね、今日も、、、」と言いながら早苗の向かい側に立ち「それでね、今日は悪いんだけど少し早め …

1-20恋する人への想い

優子と早苗が先日、7年ぶりに訪れた喫茶店「ウファ」。その帰り際の優子は「また伺います」言ってくれたのだが、店長の宇多田は不安な気持ちで過ごしてきた。その言葉を頼りに待つ身の不安とうきうきした気分はあったものの、これまでの …

1-19 うむい

この日の朝、優子は幼い自分の一人娘「うむい」を母、君江に預けてきた。母、君江にとって3才になる初孫のうむいのあまりのかわいらしさに笑みがこぼれ「一晩でも二晩でもいいわよ」と優子に答えた。ただ娘の優子の話で医者に診せたとき …

1-18 天界の光

早苗はそのままじっとしている。一滴、瞳からこぼれた。うつむき加減の頬からあごの先端に向って涙が伝ってはこぼれ落ちはじめ、頬に伝っては流れるさまは細い川のようになっていく。そんな様子の早苗に気づいた優子もなにかしら痺れるよ …

1-17 悲しみと慈しみの琴線

「ただ私は人々の中にいても人は孤独を感じているのじゃないかと思っているの。インターネットでコミュニケーション的なものが盛んなのは、便利だとか楽しむことがあるのだろうけれど、人は人とつながりをもとうとする気持ちが強いからだ …

1-16 北朝鮮やアフリカと日本

「だけど北朝鮮やアフリカの一部もひどいもんだぜ。飢餓があっても海外からの援助物資が末端まで行き渡らないというんだから悲惨だぜ」「民衆の生活をもっとよくするために国家を改革するんだと言って革命を起こした後は、その理想とした …

1-15 差別意識と金

「紛争や戦争になるとそれどころじゃない。噂やデマや風評どころか抑圧や暴力なんかが横行する」「イスラエルとパレスチナやアフリカやアジア地域での報道を見ていると長い歴史上での問題を抱えていることと経済的紛争が背景にあるように …

1-14 理性と情緒

「僕らが、この「戦争を考える会」というものを立ち上げたっていうのは、なぜ戦争は起きるのか、そしてどうしたら防止できるか、そのために何をすべきなのかを考えることが目的なんだけど、たしかに犠牲者のことも含めて考えるべきだと思 …

1-13 競争と紛争

早苗は大学卒業と同時にソフトウェア関連のオフィサーソフト社に就職した。入社当時は事務的な仕事に携わっていたが、持ち前の負けん気でソフトウェアの開発を経て、いまでは営業のリーダー的存在にまでになっていた。ソフトウェア業界の …