1-39 いじめと教師

母からなにがしかのお金を持たされていた純一たち兄弟だったのだが、しかしお金があったから、純一はクラスメイトの一部の不良たちから執拗にまとわりつかれたのかもしれない。
いじめというもの見てもまわりの人の多くは助けようとはせず、他人事のように見て見ぬふりをしがちである。
ある日、誰かがいじめのことを先生に陰で言いつけたことがあった。
それは逆の意味で大変なことになる。
教師は他人事のように呑気な対応で「お前たちの中でいじめはやっていないだろうな?」とクラスメイトに向かって尋ねる。そんな言葉を投げかける教師だった。
{ 所詮あの先生にとって他人事なんだ。誰が「私がいじめっ子です」と白状するものか。余計なことを言いやがって、、畜生!、、、 }純一は煮えくり返る思いがする。
この日以降、さらに陰湿ないじめを受けるような気がしていた。むしろ教師の言葉が起爆剤になることがある。
当然、翌日にはもっと陰湿さを感じた。いじめを受けた人間でしか味わえない不安と惨めさをさらに感じることとなる。
純一はいじめる人間を憎悪しながらも、それを乗り越えられない屈辱感を積み重ねていっている自分に焦燥感を抱いている。悔しい気持ちが大きくなったとしても、いじめる相手に正面きって反発できないでいる。いじめに対しての恐れが日々増大し、悲しいくらいの気弱さが充満している自分に解決策はないのだと思い込んでいる。
どうすればいいのか自分ではわからない。時は恐ろしいほどスローに動く。止まったかのようだ。
{ どうしたらいいんだ、、、? どう解決できるというんだ、、、?
 どうにもできない自分がここにいるだけなんだ、、、、}
忍び寄るいじめの圧力と陰湿な暴力に耐え続けなければならない。それしかないのだと思い込む。その悲しいばかりの孤独な自分がいる。
{ あぁ、誰も助けてくれない、、、、誰も自分のことをわかってくれない、、、みじめになる。相談もできない、、、、、、どうしたらいいんだ、、、どうしたらいいんだ、、、悲しい、、、、
悲しい、、、、悲しい、、、、、、悔しい、、、}
純一は一人、言葉が出ない日々が続いていた、、、、
誰にも頼れない、、、誰、も、助、け、て、く、な、い、、、
、、、、、孤独をかみしめる純一だった、、、、、、、
純一は{ 中学校に行きたくない }と切実に思っていた。
けれど学校には行かなければならないという観念が支配していた。
特に母の後ろ姿を見ていると { 学校には行かなければ、、} と思ってしまう。
だから純一は学校から帰ってくると、すぐに自分の部屋に籠る。
一人になりたかった。そこだけが唯一、心休まるところだった。明日までの。
母が自宅にいればなにがしか反抗して困らせる自分もいた、、、、。
それも面倒になって部屋に籠る。
中学校三年生のある日、純一はあるコンビニエンスストアで本を盗んでしまった。
その場で従業員に取り押さえられた。純一が盗みをしたという連絡を聞いた母は飛んできた。
母はコンビニの店長に平謝りをして何事もなかったように丸く収めてくれようとする。
店長を前に純一に向かってこんこんと説教をする母の姿を呆然と見ていた。
母とともに自宅に戻った純一は万引きした自分の状況を話すでなく、もう中学に行きたくないという意思表示だけを母に示した。母に本当の心情を言うことは避けた。いらぬ心配をかけたくなかったのである。
それに純一は高校に進学をしたくなかったが、その気持ちを母に伝えると猛反対されることぐらいわかっている。だから純一は悩み、考え抜いた。
そして母に提示したことは、もし進学するとしたら、高校は純一が選び、住むところも新しいところにしてほしいという条件だった。
そうすれば純一はいじめから逃れられると思ったのだ。
純一の意志は固く引かなかった。
母の美佐子はそんな頑なな純一を不思議に思いながら、なぜかしらかわいいと思った。
純一の言うとおりにしようと思った。なぜだかわからない。母親の直感だろう。
純一の行こうとしている高校は大阪の北のほうにあったから場所的にも納得のところではあった。
もしかすると自分の仕事のことが息子たちに知れるかもしれない。
しかしそのときはしょうがないと美佐子は覚悟していたこともある。
{ どちらにしても純一が望み、ためになるのであれば、、} と思う美佐子だったのだが、、、

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