1-32 嵐の上海公演

2008年11月14日、チエは嵐の上海のコンサートに参加しながら行方不明の愛早苗を探すべく上海市内にある早苗が予約していたホテルに泊まることにした。
どう調べてみても彼女はチェックインはしておらず気配さえなかった。
翌日、チエは始発ちかくの電車に乗って上海大舞台会場に到着すると嵐のグッズ販売の並び場所に数人が並んでいた。
先頭は日本人女性の数人だった。チエは彼女たちに声をかけるとまるで昔からの友達のように話がはずんだ。
並んでいる人たちの中にはソビエトのそれも聞いたことのないような遠い地方からの女性たちも来ていて、日本人のチエに一生懸命、話そうとする。映画の「花より男子」を見たのが、きっかけで、嵐の大ファンになったという。中国やソビエトやタイの国など多岐にわたってファンが増えているようだという説明付きである。
早苗が来ていれば、必ずこの嵐のグッズ売り場に現れるはずだと早苗の親友の泉優子の話がチエには印象的で、ソウルのときと同様に朝早く来てみたのだった。
しかしソウル公演のときにはグッズ売場の列に早苗は現れなかったし、コンサート会場でもアリーナ席の一つ一つを目を皿のようにして探してみけれど見つけられなかった。
ここ上海大舞台周辺にいる嵐ファンの何人かに声をかけて早苗の行方不明の事情を説明しても { 私には関係ないわ } とばかりに、そこに心あらずの人たちも多かった。確かに嵐の公演が始まる前だったし、やむをえないことだとチエは思った。
しかし中には興味津々の人たちもいて、積極的に協力を申し出てくれた人もいてうれしかった。
この中国上海が今年の嵐の海外公演としては最終地だから、なんとか見つけられればと願っているのだが、なんにしても早苗自身が現れなければどうしようもない話だった。
チエとしては腰を落ちつけて、できるだけ効率的に探すより他はない。
そうこうしていると公演会場の正面方向の建物の一部に窓口が開かれた。{あれって、、、?}
ソウルのときと同様、この上海の公演会場でも当日券売場が設置されていた。
考えてみれば嵐の海外公演のチケット価格は日本人にはごく普通に感じるかもしれないけれど、経済格差が大きければ大きい国や地域ほど、重荷に感じる度合いも事情も違ってくることだろう。それでもチケットを購入したい人々がたくさんいる。中国人もたくさん来ているし、他国からも来ている。さすがに他国からの人はチケットを持っているようだ。
それを狙ってダフ屋がいたるところに現れては買い手や売り手を探しているのをみれば、人気のチケットだからさらにプレミアムがついていることは察しがつくし、この広場を見渡すと普通の恰好をした男も女も地面にシートを敷いて、いろいろな写真やプロマイドを堂々と売っている。日本では販売されていない嵐に関する初めて見る品々が置かれ「にわか店」がいくつもできてなんでも商売のタネになりそうな雰囲気がある。
台北でも少し離れた町では嵐のグッズをたくさん売っていた。もちろん公式ではない。
どこの国でも商売の可能性がありと見れば売るようになる。考えてみれば日本でもどこかの街では表に出ないようなあるいは堂々とジャニーズの品々を販売している店では嵐のグッズも売っていた。だから海外の国々のいくつかの街では当然、飯のタネになりうるのだ。
上海大舞台の前の広場には警察の車両が駐車しているものの、それを取り締まろうとはしないし、それどころかどこかで喧嘩が始まっても、警察官はそこに現れず、喧嘩のまとめ役は集まってくる周りの関係者?なのだった。意味深ではある。
日本人女性らしき二人が右往左往している様子にチエは思わず「どうされたんですか」と声をかけてみると「実は偽物のチケットを買ってしまって。それにお札のおつりをもらったんだけど、偽札らしいんです。せっかく日本からここまで来たのに本当にどうしたらいいのか」と涙ぐんでいる。ダフ屋から安くチケットが買えると心が湧き立って、危険性を考えずに購入してしまったというのだ。そしてお金を支払っておつりをもらったのだが、チケットそのものが偽物だけでなく、そのおつりも偽札だったことが、あとでわかったというのだから、まるで往復ビンタのようなものである。(当時はまだ現金が主流だった) チケットも事前に
購入せずに日本から二人してここまで来たのだからたいした嵐ファンなのだった。
このように商売のタネになりそうな人だとみるとダフ屋たちは、その人に押しかけてくる。
もし正規のチケットを余分に持っている人が現れたら、売ってくれと次々にせがんでくるし、なかなか売ってくれないとなるとお金を示してその人にまとわりつくことになる。それでも売らないと、どこまでも追いかけてきて危険な状況が生まれることになりかねない。{身の危険を感じるほどやばい。危な~~い}
たとえ危険を感じて警察官のところに行ってもそのときだけである。警察官がそばを離れたら、ワッとまたダフ屋たちが近づいてくるのだ。お金への執着が強いのだ。警察官も我関せずだから信用はしないほうがいいような気がする。

グッズ売り場に並んでいた中国人の若い女性が「お金もチケットも偽物が多いから、気をつけないと」と持っているチケットを陽にかざしながら注意してくれた。どこの国にも優しい人はいる。
それにチケットもお札もいろんなものの偽物が動いているから、誰から買うにしても中国の人たちは慎重になる。
早苗はやはり現れず、チエは19:30の開演前に会場に入ることにした。

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