生きる

1-168 生きる
お母さんが何か変。
うむいがニコニコして朝食を食べていたのにお母さんは上の空のようにして向かいに座って食べていた。
けれどしばらくするとお母さんの眼が宙に浮いて見えたかと思うと目を閉じてしまった。
もしかすると眠ってしまったのかな?と思った。
いやそんなことはないと思う。
だってお母さんの口に中には少し食べ物があるはずだから、、。
まさか食べながら眠るなんて。
それにしばらくするとお母さんはむずむずしだした。
何か考えごとをしているのかな。
うむいはそんなお母さんの様子が心配。
お母さんはうむいの寝る前に眠りについたことがない。
いつも起きている感じがする。
それにしても今日のお母さんの様子はやっぱり変だ。
それでお母さんのすぐ近くでよく見てみようと思った。
母を下から見つめることにした。

ところが、しばらくするとお母さんの目じりから涙がこぼれ、うむいの顔に落ちた。

びっくりした。
じっとしていると、お母さんの泪でうむいの顔はずぶ濡れになっていったのだ。
やはりお母さんはうむいに言えない悲しいことがあって悩んでいるのだろうと思う。
お母さんはときどきヒステリックな声を出すことがあっても涙は見たことがなかったから心配になる。
どうも今日は様子がおかしい。
助けになるのならばお母さんの悩みを聞いてあげたい。
そうしているうちにお母さんの瞼が、突然、開いた?
でもお母さんの瞼は開いているのにまだ何かうつろに見える。
うむいは母の太ももを軽く叩いた。
「お母さん、、、、お母さん、、?」
母の優子はうつろな状態から我に返った。
うむいが膝のところにいて優子を見つめている。
優子は今でもまるで眠りと目覚めの間に彷徨っているかのような気がしている。
「あっ、、うむい、、、どうしたの?あれっ、泣いているの?」
「うぅん、、お母さんは眠っていたの?」
「うん、、疲れちゃっていたのかもしれないね。それにしても、あれっ、私、食べながら眠っていたのかしら。うむいはどうしたの、顔が濡れているわ」
「お母さんの泪だよ」
「えぇつ、、、、?」
「何か悲しいことがあったの?」
「まぁ、、、、、、大人みたいに口調で聞いてくるのね」
「うむいがお母さんの悩みを聞いてあげるね」
「ありがとう」
「、、、?」
「うむい、、、でも私は悲しくて涙を流したのではないのよ。

「、、、?」

「心配しないでね。あのね。

うむいも生きていると悲しいことや悩みはいろいろと経験するはずだけれど、でも悲しいことばかりでもないことがわかったの」
「、、、、、、」
「うむいは心配してくれたのよね」
「うん、、、」
「うむいは悩みはあるの?」
「う~ん、、、わからない、、、大人になると悩みは多くなるの?」
「そうね、、、生活しているといろいろなことが出てくるよね」
「じゃあ、哀しかったり苦しくなったりしたときはどうすればいいの?」
「むずかしい質問ね。
でもこれだけは言えるかもしれない。
その悲しかったり苦しかったり悔しかったりしたときは、苦しんでばかりいないで、その現実を見つめて、しっかりと考えることが大事だと思うわ」
「えっ、、」
「その困ったときの現実を、まずは受け入れてみることよね。
そこでそれをじっと考えてみる。」
「でも考えれば考えるほど苦しいんでしょ?」
「そうね、そういうときもあるよね」
「その時にはどうしたら、良くなるの?」
「うむい、、、悩みの中に答えはあると思うよ。

私には、いままでそのことが頭ではわかっているつもりがわかっていなかった。

きっと誠実さが足りなかったのだろうと思うの。
ちゃんと生きようとしていなかったように思う」
「ちゃんと生きていなかった?」
「私は。本当の意味の足りないことや知らないことが多いことがわかったのよ。いつのまにか、深い意味が、わからずにあっという間に大人になってしまっていたわ」
優子はもそう言いながら眼がしらが熱くなった。
「うむい、、、私はもっと大事に生きなければならないと気づいたのよ。
それに私は探し求めていることに気づいたの。

「探し求めてる❓」

「人生の悩みの中に自分の求めているものがあるとわかったの?

そのことが分かったので嬉しかったのよ」
「えっ、、、じゃあ、お母さんの涙がたくさん出たのは悲しくてじゃなくて嬉しかったから?」
「そう、、、」
「ふぅ~~ん、、、」
うむいの予想とはまったく違っていたのだ。
「うむいは、これからいろいろなことに気づくと思う。
でも考えてほしいの。それは人が生きている証拠なのよ。

経験することの中にとても重要なことが含まれているのよ。
「生きる」ということを大事に考えてほしいと思う。私ももっと考えるわ」
と優子はうむいをじっと見つめた。
うむいはお母さんにじっと見つめら続けていると体が熱くなってきた。
お母さんが自分の考えていることを打ち明けてくれた。
それにとても大事なことを教えてくれたように思う。
うむいにとって大きな出来事だった。
お母さんの言葉が心に沁みた。

だから、うむいは「生きる」ということを大事に考えてみようと決心したのだ。

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