1-67 老後

人は身体のそこここが思うようにならないようになると歳を重ねていると気づくものである。自分たち夫婦が若いころ・・・・それは戦後復興期の経済は右肩上がりの波が続いた。君江は君江なりに夫の経営する印刷会社の仕事を手伝い、家族の …

1-66 家族の問題

今日の夕食は君江と光男とゆむいは同じテーブルで食事をした。二人は初めてではないのにまるでめずらしいものを見るような様子だったし、意識しているせいかちらちらと互いをうかがう感じが君江にはおかしかった。光男は日頃から用事がな …

1-65波打つ生命力

昨晩、娘の優子が孫のゆむいを「一晩、預かってね」連れてきた。{ 見た目には普通に見えるんだけど、、、 }とゆむいの様子を見て君江は思う。夕食を終え、ゆむいは窓際にある鉢植えの花々のそばで絵本を見ている。{ やっぱり女の子 …

1-64 交渉の結果 

「ルルルルルルル、、、ルルルルルル、、、はい、もしもし、、、あぁ、、そう、、、そうわかった。それでケンちゃんはどっちがいい? 今日、泊まるところなんだけど温泉じゃなくてもいい? あ、そう、わかった。お任せでいいの? うん …

1-63 交渉

和田はケンに連絡をしてみることにした。「どうだ、ケン、今どこだ?」「ついさっき伊豆高原に着きました。そちらの場所を探しています」「そうか、どうしてもわからなくなったら連絡くれ」{ やっぱり、先ほどまでのケンは伊豆高原に到 …

1-62 人の特殊能力

横を向いたまま応えるチエが急に大人びたように見える。「はあ、そういう考え方もあるんだねぇ、、、チエ、ケンは今、どの辺を走っているかメールで尋ねてみてくれ」「はい、、」チエは携帯を出して得意のメールを打ち始める。夜の暗さの …

1-61 死んでもらいます。

浴衣に着替えた二人が下駄の歯を敷いてある砂利をぎしり、ぎしりときしませながら、ペンション「ソリエ」の出入り口から出てきた。 「おい、あれは対と女だぞ。 どうだ、そうだろ?」 「あ~、そうです、そうです」 和田は早速ビデオ …

1-60 半月

1-60 夜空のたもと遠く前方に停車しているタクシーのほうからそのエンジン音の強弱が伝わってくる。{ あのタクシーはユーターンをしているのだろう。ということは対と女はそのタクシーから降りたはず }やがて前方のタクシーがこ …

1-59 地の利

タクシーは走り出すと、すぐに和田は話しかけた。「運転手さん、、、その先のところを右にぐるっと回ってください、、、、、、、そう、そこを、、それでもう少し先であちら向きにして停車してください」運転手の肩越しに腕を伸ばして指し …

1-58 葛藤と沈黙

{ もしかすると、、、間違っていたのかも、、、}さっき一度見失ったときにチエに「お前はそっちのほうで見張っていろ、絶対見失うなよ」と和田は指示していたような気がしてきた。{ 、、そうかもしれない、、、いや、確かにそうだ、 …

1-57チャンス

すぐに和田はチエに電話をかける。「おい、チエ、駅に向かって左側方向に人がいるだろう」電話に出たチエに「もしもし」も言わずに和田は怒鳴りつけるように言葉を放つ。「はい、、」「わかるか?」「、、、、、、」こんどはチエから返事 …

1-56 幸運

しかし、よ~~く見ると暗くてよく見えないが、あの辺にベンチみたいなものがあるようなないような、、、}和田は目を凝らした。さすがの私も心細くなって後ろ側の駅方向を振り向いた。やはりこんな状況の中、チエの姿は見えない、、、、 …

1-55 岐路

チエと和田は改札前近くまできた。一瞬、チエは情けない顔をしている。対の次に乗車チケットのチェックをしようと改札口にきていた下車客を和田は追い抜く。その下車客は、私たちの割り込みを{ 何、何、? } とばかりに目を白黒させ …

1-54 窮地を前にして

対と女の二人は座席に着くやいなや買ってきたビールを取り出して飲み始めた。対のバッグと女の荷物は頭上の荷物置きにすでに載せてある。幸運にも和田とチエは彼らから頃合いのいい後方側に座ることができた。「女のほうはそんなに若くな …

1-52 発想の応用

その矢先、対らしき人物が出てきたではないか。{ あれれっ、対じゃないか? }予想より早い。早すぎる。こと調査というものは予想を裏切ることはしょっちゅう。しかも必ずと言っていいほどいろんな邪魔が入ったりする。しかたがない。 …

1-51 とびっきりの笑顔

ありがたいこと?にチエは余計な追尾はしなかった。しかし調査初日にしてはどっと疲れた。ビデオカメラで建物などを撮った後、今日の調査を終わりにするつもりで、さりげなくチエの方向を向くと近づいていたチエは和田にとびっきりの笑顔 …

1-50 本物の対

和田の声に反応して変な顔を向けながら去っていく。「えっ、どうしたんですか?、、、、」とケンの声が受話器から聞こえてくる。「いや、何でもない、こっちのことだ、、、」和田は今の状況を手短にケンに話す。まったくチエには気が気で …

1-49 尾行前

和田はしびれを切らして突然、車の窓ガラスを開き怒鳴った。「二人ともこっちへこい」突然の怒声にびっくりした二つの顔がこちらを凝視している。車の中でじっとしているわけにはいかない、、これから愚痴に似た私の説教?の始まりである …

1-48 問題の突破口

生きていると何がしかのことが起きる。それを解決したり、突破したり、克服するにはさまざまな要素が必要である。その大事な要素の一つはまずはそのことを受け入れて観察することから始まる。どこまで深く観察できるか、できているかが鍵 …

1-47 許せない

ドアのところで覗こうとポッンと立っていた幼いうむいは危機一髪だった。そのドアを片足で蹴った夫の純一の行動から優子は身を挺して幼い娘のうむいを救った。さすがに夫はばつの悪そうな顔をして自分の部屋の方に去って行った。優子はさ …

●1-46 夫の暴力

夫の純一はいつものように朝食を食べた。昨晩のことを忘れたかのようだった。朝食を済ませ夫は平然と仕事に出かけていった。足音が消えてから「ふぅ~っ」と妻の優子は緊張の糸が切れたように椅子にへたり込んだ。昨晩遅く、酒臭い息をし …

1-45 いったいどこに

早苗は実は優子にとって命の恩人だといっていい。ある真夏、当時、同じ大学生のいつもの仲良し5人で、静岡県のとある山のふもと近くでキャンプをしていた。東京ではほとんど見られない湧き水か、そのキャンプ地から少し歩くとあり、澄み …

1-44 再会する友情

  夫は地元の大阪で悩んだ末に退職し、自分の会社を興こすためにこの東京に移り住んだ。 それから数年経った。「会社を大きくして営業所を全国各地に作るぞ。金がいくらあっても足りない」と酒の匂いをぷんぷんさせながら携帯電話でし …

1-43浮気の前触れ

夫の純一が妻の優子の父である尾崎義三に会社経営の相談がしたいと言い出した時には夫の意気込みを感じていた。それに優子は大阪で純一と姑との三人で住む境遇を打破したかったこともあるし、久しぶりの東京の生活を思い出していたのだっ …

1-42 商機

しかしだからといって引き下がるわけにはいかない。充分な広告宣伝の資金のあるはずもないのだから、毎日毎日同じことの繰り返しであるが、自分たちなりの売り込みを続けるよりほかはない。、、、そして、、、これが創業という大きな壁な …

1-41 創業のとき

泉純一は「エアプリティ」社は東京都渋谷区道玄坂に起業した。前の会社の後輩二人が協力してくれるので三人で発足することになった。会社の出資金は純一の貯めていたお金を使った。それとともに実はその金額以上を妻である優子の父、尾崎 …