1-64 交渉の結果 

「ルルルルルルル、、、ルルルルルル、、、はい、もしもし、、、あぁ、、そう、、、そうわかった。それでケンちゃんはどっちがいい? 今日、泊まるところなんだけど温泉じゃなくてもいい?
 あ、そう、わかった。お任せでいいの? うん、わかった、、、所長、ケンちゃん、もうそこまで来ているそうです、、、、それにまた所長の携帯、鳴らしても出てくれないってケンちゃんブウブウ言ってますよ」
「あれっ、、、そう、、、、」和田はチエとその女主人もから少し離れるようにしてケンに電話をかける。
「それで私たち会社で泊まることになりますので領収書は出して貰えますよね?」
とチエは再び女主人に尋ねている。
「はい、領収書はもちろん大丈夫です。 、、、、」
「どうします?、、、お値段のほう?、、」
「わかりました。もう遅いですし、、、じゃあ特別ですよ、、4500円朝食付きでいいですよ」
とあきらめぎみの顔である。
「そうですか、わかりました。 所長、それじゃあ、今後のこともあるしここに決めますか?
気に入ったわ、、、ここ、、」
{「今後のこと」って?}と思いながらも「あぁ、いいよ」と私は歩調を合わせるようにした。
「それじゃあ、ここに決めます。朝食つき、税金その他込々で4500円」とチエは勢いがよい。
「へっ、、税金もろもろ込み?」と女主人は顔が少しゆがむ。
「もちろんです。いまはそうなっているでしょう? 価格表示って」
「、、、、いやぁ、恐れ入りました。お嬢さんにはかないません、、、 
もうしようがないですよねぇ、、、、、」と女主人はそう言いながら私に悲しそうな顔を向けた。
{ なんと言っていいかわからない }私は黙って見つめあうことぐらいしかできない。
するとチエは「駐車場はありますよね」とさらにたたみみかける。
「大丈夫です、、、、大丈夫です。空いているところにどうぞ入れてください、、 
ここに鍵、置いておきますから、どうぞご自由にお使いください」
と言いながら女主人は、私に三つの鍵を渡し、逃げるようにして階段に向かう。
そして聞こえるような聞こえないような声でぶつぶつと呟きながら、階段を下りていってしまった。
チェックインするときは普通、宿泊の受付カードか何かに泊まる人の名前とか住所とかを書かなければならないけれど、、、この後、あの女ご主人は何も言ってくれないし、それでいいのかな?
まぁ、これほど印象に残ればそれも必要ないのかもしれない。
「所長、どこの部屋がいいですか?」
「この部屋でいいよ」
「じゃあ、私は隣にします。2階のほうが見晴らしがいいし、、、ということはケンちゃんは1階ですね」チエは私を巻き込んで部屋割まで決めている。
車の音がする。ケンが到着したようである。チエは階下に下りて行った。
1階には誰もいないし、出てこない。
「ちょつと出ま~~す」とチエが奥のほうに声をかける。
「ふはぁ~~~~い」と奥のほうから、さっきの女主人の返事が聞こえてくる。
奥から聞こえてきたその声音は何か情けないようで勢いがまったくない、、、、、、
チエは外に出た。
ケンが車の中からにこっと笑っているように見えた。
手招きして車を誘導し、ペンションの青空駐車場に入れる。
このペンションの外の敷地内にはこじんまりとした小さな一軒家みたいな造りの露天風呂があることをケンに説明する。
「へぇ、なんか隠れ家的な露天風呂でいいですねぇ」ケンが言った。
露天風呂は自分の部屋の鍵で露天風呂のドアは出入りできるようになっていて、その入口に掛けてある札を裏返しにすれば「使用中」という表示になるのだ。内側からは鍵がかけられるようになっている。久しぶりに露天風呂に入れるかも。
「明日、対と女がペンションを出るところの証拠撮りをするが、それを二人に任せるぞ。、、、東京方面も逆方向も始発電車は5時くらいからだからな、必ず撮れ。行き先が東京だったら、それで今回は終了となる。もし何か変な動きがあったら、いつでも連絡をしてくれ、、いいな?」と任せられた二人はうなずいている。
{ 二人ともあまり眠る時間がないけど、まあ、ここはしょうがないな、、 }と思いながらケンとチエを見比べた。
チェックアウトは午前11時なのだが、対と女がいつ出発するのかわからない。
念には念を入れておかなければならないし、絶好の機会を逃してはならない。

よかったら、クリックお願いします。


にほんブログ村 ⇔ 人気ブログランキングへ

お読みいただきありがとうございました。

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です