1-50 本物の対

和田の声に反応して変な顔を向けながら去っていく。
「えっ、どうしたんですか?、、、、」とケンの声が受話器から聞こえてくる。
「いや、何でもない、こっちのことだ、、、」和田は今の状況を手短にケンに話す。
まったくチエには気が気でない。電話しながらサエの様子を見るていると{ あちゃっ、、、危険! } まだやってる。それでも対はチエに気づかない。
{、、ったく、もぅ、頼むよ、、、もういいよ、、} 
和田は祈るようにして見つめているしかないのだ。
しばらくするとサエはようやく対のそばから離れた。
和田は思わずサエに感謝の気持ちが湧いた、、いや違う、ほっと一息ついた。
何か嫌なサスペンス映画を見ている感じがする。
対は結局、何も購入せずに店から出てきたのだが、あるいていくうちに今度は酒屋に入って行く。{ どうも思うように帰らないもんだなぁ、、、}と和田は思いつつも、油断してはいけない。何も買わずにすぐに出てくることがあるので、店の出入り口を注意しておかないと。
チエ一人に任せておくのも危険なことだし。
酒屋の奥のほうはよく見えないが、対の姿が店のガラス越しにちらちらと垣間見える。
しばらくすると大き目の袋を片手にして対は店から出てきた。
左手に黒い鞄、右手にボトルの入ったようなビニール袋を持って歩いていく。
ここまでくれば、対の行く先はまちがいなく自宅だろうと思う。
{ やれやれ、、、}和田は目を離さないが余裕が出てきた。
チエはときどきよそ見をしながら尾行をしている。
{ なんて奴だ、、、それになんだあれは? }
チエはわざとかどうかわからないけれど、尾行しながら、ところどころの店先の商品にも目を配りながら歩いていく。
今日のチエは和田のことを無視しているのか、それとも余裕なのか、、、
ようやく対は自宅マンションに到着した。
郵便ポストを見た後、入り口のドアを鍵で開け、マンションの中に消えていく。
オートロック付の比較的新しいマンションである。
チエはまたしてもそろそろと近づいていく、、、、、
{ おいおいチエ、余計なところまでついて行く必要ないぞ、、、}と遠くから和田は様子を見守るしかない、、、、、、

よかったら、クリックお願いします。
にほんブログ村 人気ブログランキングへ

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です