1-45 いったいどこに

早苗は実は優子にとって命の恩人だといっていい。
ある真夏、当時、同じ大学生のいつもの仲良し5人で、静岡県のとある山のふもと近くでキャンプをしていた。東京ではほとんど見られない湧き水か、そのキャンプ地から少し歩くとあり、澄みきった川も流れている。ここは何度かみんなで来たところで慣れていて、泳ぎの得意な優子ともう一人が、早速、着替えて泳ぎだした。しかし、しばらくすると突然、泳いでいた優子の片足が何かにとられ、それから逃れようとすると深みにはまってしまった。もがきだす。川の流れはそれほどではないが、最初、何か片足がはまったような気がしたくらいで何でもない感じがしたのだが、急に身動きできない状態になった。泳ぎが得意な優子が慌ててしまった。さっきまで優子の近くで泳いでいたもう一人はそこから離れていて泳ぎに熱中している。優子の異変にまったく気づかない。慌てた優子は声なき声を出しながらもがく。その異変に最初、気づいたのが岸辺で食事の支度をしていた早苗だった。川の浅瀬で遊んでいる人たちの中には優子の変な様子に気づきだしたが、それでも唖然としたままである。急なことにどうしていいかわからなくなるのが人の常である。やみくもに川に飛び込んで助けようとしても一緒に溺れる危険性がある。
そのときの早苗はとっさの判断をした。テントの中に置いてあった長いロープを持ってきて早苗は自分の胴体にロープを巻き付け、仲間二人に片方のロープの端を渡し、「私の様子を見てて、合図できたら必ず引き上げて!!」と言い渡した。そう怒鳴るや否や早苗は溺れそうになっている優子めがけて川に飛び込んだのである。早苗自身は特に泳ぎに自信があるわけではない。しかし日頃から機転の利くほうだった。結果的に早苗はロープという命綱を使って危うく溺れかけていた優子を救うことができたのである。
小柄な早苗はぐったりとしているしたたかに水を飲んだ重い優子を川岸まで抱え込んだ。
{ あのときの早苗の機転がなかったら、本当に危なかった。死んでいたかもしれない } と優子は感謝していたのである。
あの早苗はいったいどうしているんだろう?
何としても突き止めたい。助けられるものならばなんとかしたい、、、

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