1-42 商機

しかしだからといって引き下がるわけにはいかない。充分な広告宣伝の資金のあるはずもないのだから、毎日毎日同じことの繰り返しであるが、自分たちなりの売り込みを続けるよりほかはない。、、、そして、、、これが創業という大きな壁なんだ。。。
社員として毎月の給料を貰って仕事をしていたときとの違いを感じていた。
そうこうしていくうちにぽつりぽつりと契約してくれるところが出てきたのである。
幸運だったか、世の流れだったのか。
純一が会社員のときには技術的な仕事で営業は苦手だったのだが、一つ商品の売り込みに成功してみると何かしらの自信を得て面白みが湧く。
第一号の設置してくれたお店のさまざまな写真を撮って、次の売り込みに利用した。
純一たちは流れ出る汗を拭いながら、静かに手ごたえを感じていった。
{ 会社員だったときとは違い、仕事の大変さを再認識したけれど、その意味合いがだいぶ違う。社員として雇われていたときとは違い、今はやりがいというものがあるが確かにしんどい。一緒になって営業してくれている部下の二人も以前と顔つきが違う。しかし仕事量が半端ない }とみんなに頭を下げたい気持ちになる純一だった。
まだ小さい会社の社長だから、どうしても外回りが多くて、現場で実際、自分が空気清浄機を取り付けているうちに自分が社長なのか職人なのかわからないほどの状況になっている。仕事が終わっても部下と一緒に外で飲むときは飲み屋や飲食店に空気清浄機が設置できるかどうかが、自然と気になってくるものだった。それがきっかけで店主と契約をしたこともある。だから昼間はセールスや契約をしたり、機器を設置もすれば、夜は夜でなんでもよい。きっかけさえあれば商売に結び付けたい。貪欲な純一だった。そうでなければ先に進めないと思っていた。
そんな矢先、清掃サービス業界のシェアの一角に食い込み、今や中堅と言っていいほどの会社に上りつめている「クリーンシェア」という会社から問合せがあった。
その担当者によれば「弊社は空気清浄機について知識があまりないのですが、御社の商品を興味深く拝見しました」という嬉しい連絡だった。
名もない小さなエアプリティ社が入り込めるはずのないような会社だった。純一は { 我々には特殊な技術力があるからだ、、、だから、、、こうやって思わぬところから声がかかる } と
心ひそかに喜んだ。
もしこの会社との取引ができればエアプリティ社としては一気に空気清浄機の業界だけでなく清掃分野関連まで名を知られることになるだろう。 { となれば、、、、}
待ちに待ったチャンスが訪れていることに熱くなる純一だった。
機を置かず、早速動き出す。
クリーンシェア社は東京の新宿区に本社を構え、今や飛ぶ鳥を落とす勢いで大きくなっている。いままでの清掃サービス業界の中では異色の動き方をしていた。自動で部屋をクリーニングできる機材の開発とロボット化を進め、それらを開発する世界企業と取引関係を進めていた。日本の繊細な技術や製品群を売り込むと同時に海外からの情報を収集していた。どこの国はどのような清掃サービスを必要としているか、今後、どのような地域でどのようなサービスが必要なのか、詳細なデーター分析をしていたのである。
日本国内でしのぎを削っている大手の清掃サービスはほとんどが国内向けであり、ある程度限定されるサービスや価格競争の中にあった。つまり新規に参入するには大きな壁が立ちふさがってもいた。そのような理由からクリーンシェア社はいち早く、先進的な技術と販売力の情報収集及びデーター分析を持ち込んで世界に打って出ていたのである。
そこにエアプリティ社の技術情報が流れた。
純一は早速動く。
1m四方の立方体の透明なプラスチックの箱を作り、デモ機などをクリーンシェア社に持ち込んだ。
クリーンシェア社の会議室に案内された純一と部下たちはそれらの器具をテーブルの上に設置する。
その箱の中にエアプリティ社の空気清浄機のデモ機を入れる。そして煙草やその他の煙をその密閉された箱の中に送り込んで充満させる。つまり透明感が全くないようにする。そして担当者の目の前で電源のスイッチを入れる。するとほんの数十秒でたちまち箱の中は透明になるのだった。
次に他社のデモ機を中に入れて同様にしてみる。するとたちまちとはいかず、透明感近くになるには時間がかかってしまう。どちらも箱の中の煙の量の分析数値をカウントできる機器も設置してあるので数値データの変化が目に見えるのである。その透明感の速度の違いとデジタル的な数値の変化に担当者たちは目を丸くした。
純一は「本日はお忙しいところお招きありがとうございました。弊社はまだまだ小さい会社です。しかしながらこのように弊社の空気清浄機は大手の最新式のものと比較しても段違いに違うことがわかります。これらは弊社の特許技術です。技術は最先端のものですが、今後も研究を続けていきます。しかも比較的簡素な装置ですので価格はそれほど高くないのです。当然、他社と比較しても安いのです。これは先ほどデモ機で行った試験の様子をビデオに残したものです。どうぞご検討をよろしくお願い致します」とにこやかに案内したのである。

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