1-56 幸運

しかし、よ~~く見ると暗くてよく見えないが、あの辺にベンチみたいなものがあるようなないような、、、}和田は目を凝らした。
さすがの私も心細くなって後ろ側の駅方向を振り向いた。
やはりこんな状況の中、チエの姿は見えない、、、、、
肝心なときいつも奴はいない、、、、
{ どうしょう、、、、??? }
さらに歩幅を緩めてゆっくりと動いていると彼らは来た方向を逆戻りしてくる動きをみせた。
{ あれれっ、こんどはこっちに向かって来る?、、、もっと悪い状況になる、、、このままだと私は彼らと鉢合わせしてしまう、、何てことだ、、、まさか怪しまれたわけではないはずなのに、、、、}となればこちらに向かってくる彼らのルートと微妙にはずしていくほかない。
幸運にも私はこの広場のほぼ中央付近にいるから彼らと適当な距離をおいて自然にすれ違うことができるはずだし、まわりはだいぶ暗くなってきたし、私の顔はよくわからないはず。
{ しかし彼らはいったいどこに引き返そうとしているのか?、、、もとの方向だから駅方向になるのだが、、、、 }彼らは私とすれ違った後、やっぱり駅方向へとゆったりと戻って行く。
彼らが駅に用事があるとしたら、きっと駅かその周辺にいるチエが見つけることだろう。
私は彼らの動きを気にしながら、先ほど彼らが立ち止まっていた広場の端の地点まで来てみた。
ここには長椅子が二つ置いてあり、小さな外灯が一つポツンと灯っている。
これは、、、ひょつとするとタクシースタンド?
よく見ると小さな看板が立てかけてあってタクシースタンドと書いてある。ここにもあった。
{ なんと彼らはタクシーに乗ろうとしていたのか? しかしタクシーがきていなくてほんとに幸運だった。もしきていたら、私たちの乗る後続のタクシーがないはずだから、見失っていたはずなのだ、、、ところであの二人、、、何しにいったのだろう ? }
私はすぐにチエに電話をかける。チエは駅近くにいるはずなのだ。
携帯電話の呼び出しコールが数回鳴って、ようやくチエが電話に出た。
すぐさま私は「対と女はそちらに向かったぞ、見たか?」と怒鳴った。
「いえ、こちらにはいません」
「えっ、いない? そんなはずじゃあ、、、じゃあ、どこにいるんだ?」
「ちょっと見えません。」
「お前、どこにいるんだ?」
「まだ駅のところですけど、、、和田さんはどこですか?」
「何、、、? 俺はまだ広場だ。見えないか? それより、対と女は駅のところに戻っているはずだ、、、、おかしいな、、、、そっちにいるはずだぞ?」
ここで見失ったら、何にもならない、、、私はいらいらしてきた。
私は駅方向に目を凝らした。すでに駅周辺の外灯が灯っているのだが。
{ あっ、いた } 小さい木立とチエのうろうろしているシルエットだけが浮かんでいる。
{ しかし肝心の対と女は いったいどこへ消えたというんだ? } 私の頭は熱くなってくる。
しかしいつまでもチエからは連絡が来ない。
{ まさか、、、すでにどこか他に行ってしまったというのか?
さっきすれ違った後、私もユーターンしてついて行けばよかったんだ、、くそっ! 
だが、あのとき、すぐに後をつけていくのはあまりに不自然に思われたのだ。
もし彼らが振り返って、私を見たら { あれっ? } と思うかもしれないのだから、すぐに追尾する勇気がなかった、、、、やっぱり、、素直について行けばよかった、、失尾?
今から追っても間に合わないだろうか?、、でもどこへ消えたというんだ? }
私はまたしても後悔の念がふつふつと持ち上がってきた。
{ でもなんとかして探さなければならない、、、}さらに緊張が高まってくる。
ここまで尾行したのに失敗に終わったら、ほんとに惨めになる。
{ 時間がすぎればすぎるほど彼らの所在がわからなくなる、、、、}
私は駅周辺を睨みつけ、走って向かうことにした。
「あっ !」
瞬間、私の目に映った何かの動き、、、{ あっ、暗闇が動いたように見える。もしかすると?}
駅のはずれにたたずんでいる一人の黒いシルエットが動く。
だんだん暗いところに目が馴染んできていた。
「あれ、、、何?、、、あれは人だ、、よな?」
さらに目を凝らしてみると黒い影がかすかに動いていた。
{ もしかすると、、、そうであってほしい、、}
私は心の中で叫んだ。かすかに動いた動きが対に似ている。
しかし一人だ。 { 違う、、、? }

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