1-26 依頼者からの電話


純一の浮気調査報告書を優子に渡した数日後、、、その優子からの電話だった。
和田に一通りの挨拶をしたあと、、、優子は言い出した。
「実はこの間の調査の結果資料を見直したのですが、さすがプロの方だなと思いました。
きれいに証拠が撮れていますし、頼んでよかったと思いました、、、、ああいうふうに証拠が撮れていると相手はどうしようもないんでしょうね」
「そうですね、証拠というのは第三者が納得できるものでなければならないので、できるだけ目に見える形で証拠を撮るようにしています。ご主人の場合は相手の女性と小旅行をしたようなもので、行動と浮気現場のペンションでの出入りや宿泊の様子の画像が撮れているのですから、もうこれで逃げようがないでしょうね。しかしまさか平日の早い時間に伊豆高原まで行って泊まるとは思いもよりませんでしたね」
「それで今後どうしたらよいのかと思いまして、ご相談したいと思ったのです」
「離婚というところまで考えておられますか?」
「この間、申しましたように、いままではまったく離婚は考えていなかったのです。でも今後どうなるかもありますが、あの様子だと離婚のことも考えなれればならないかもしれませんね?」
「そうですねぇ、、、」
「どのようにしていったらいいとお考えでしょうか?」
「一般的なことを申し上げますと、まず証拠はきちんとビデオで撮れていますから、もし裁判になっても問題はなく勝つことができます」
「はい」
「ただ、その前にご夫婦で、お話合いをする方もおられますけれど、ご依頼者によっては浮気をしているご主人をすぐに問い詰めたりする人がおられます。これはケースバイケースで、感情のおもむくままに行動すると相手に教えなくてもいいようなこちらの持っている情報を悟られてしまって、裁判になる前に対策を練られてしまうことがありますので要注意だと思います。もし最終的に離婚になることや裁判の可能性も含めて考慮されるのであれば、慎重に行動されたほうがいいとは思います」
「この女性と主人が別れてくれればと思っていますが、どう思われますか?」
「当然そうなればいいですよね、ただスタッフの意見もそうですが、あの様子ではすぐに別れさせるのはむずかしいでしょうね」
「皆さんはどんなところで、そう思われたのでしょうか?」
「そうですね。あの二人の様子を見るとたしかに親密ですね」
「逆にあの女性は私たち夫婦が別れてくれればと思っているかもしれませんよね?」
「それはどうでしょうか?、、、」
「今、主人はルンルン気分でしょうしね。あの女性のことは、どう思われます。もっと詳しく調べたほうがいいでしょうか?」
「女性については、もう少し調べておいたほうがいいとは思っています。お任せいただければと思います」
「お願いします。あ、それから、、、」と優子は切り出した。
「はい、、、」
「あの露天風呂で録音していただいたものがありましたけど、あれは盗聴ということにはならないですよね?」
「大丈夫です。あれはたまたま屋外の特設された露天風呂に二人が入ったときのものです。比較的、近づきやすかったので、試しに録音器を置いみたのです。お風呂の様子ですのでたいしたものは録れていないと思いますが、対象者のよりプライベートなものですし、これは参考にしていただければと思いお渡ししたものです」
「録音されるときはその露天風呂の近くに誰かいて録るのですか?」
「いいえ、録音機器を置いておくだけで、人はそばにおりません」
「それは大変でしたね。長い時間でしたでしょうから編集されるのもたいへんですね」
「そうですね。スタッフの映したものも集めて編集し、大事な浮気の証拠を厳選したつもりです。露天風呂での録音のほうは証拠資料というより参考程度と考えましたので、時間の関係もあり申し訳ありませんが、編集はしておりませんで、そのままCDにダビングして差し上げたのです。まぁ、より個人的なものですし、私どもがご主人と女性の露天風呂でいちゃついていたのを聞くようなことはなるべく避けたいですからね。伊豆高原の夜で騒音は少ないとはいえ、屋外ですから、音などはいかがでしたか?」
「えぇ、二人でお風呂を楽しんでいるようで、あまり聴く気にもなりませんが、いつか時間があればとは思っています。あ、それから、私の提出された資料や録画や録音の原本はいつまで保管されるのですか?」
「先日、申しましたように、お渡ししたDVDや資料については特別なことがない限り、私どものほうでは長期保管はしないのです。1ヶ月以内には破棄してしまいます。ですので、もし泉さんが将来、裁判などを考慮されるのであれば、ご自身でその資料を保管して頂かなくてはなりません。ご主人には見られないところに置かれたほうがいいと思います」
「わかりました。いただいた資料は実家にでも置いておきます」
「そのほうがいいかもしれませんね」
、、、私はこのときの優子との話になんら不審な感じをもたなかったのだ。
、、、しかし、、、

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