1-27 嵐のコンサートチケット

夏も過ぎ去った2008年10月30日、探偵社の所長である和田と行方不明になっている早苗の父の愛啓介はシンガポールへ、そして同じ日、スタッフのチエはジャニーズの嵐が開催するソウルへ向けて飛び立った。
シンガポールは一年中常夏といっていいところだが、韓国はそうはいかない。チエは肌寒い東京から、ほとんどかわらないソウルへの旅となる。
チエは早苗が予約していた10月31日(金)の同じフライト便に搭乗したいとは思ったが空きがなかった。早苗は予約していたフライトに実際、乗るかどうかはのちに確認できるだろう。

どちらにしてもどこかで早苗をキャッチできればそれに越したことはないのだが、いまだ彼女は自宅に帰った様子がないのだから、その予約されたフライト便に乗ることはないかもしれない。ソウル市内のホテルのほうは嵐のコンサートの関係で混雑することが予想される。だから早苗が予約しているリバーサイドホテルに空室があるかどうか気をもんだが、早苗の勤務先であるオフィサーソフト社の取引のある旅行社にプッシュしてもらった結果、なんとかチエの一部屋は予約できたというので安堵した。
チエはもともと「嵐」の海外公演の2日間とも観にいく予定だったのである。
ただ今回のチエが早苗の行方調査を行うことで、ソウル往復の旅費とホテル代を勤務先である探偵社が出してくれることになったのでありがたかった。その分をアリーナ席のチケット取得にはずむことにし、急いでオークションで探すことにした。チエはオークションの出だしより最終に近いほうが、たとえ人気の嵐のチケットであっても落札価格が落ちていくだろうと予想していた。台北のときもそうだったし、ソウルもそうに違いないのである。ただし落札時期が遅くなればなるほど出品数は少なくなることから、自分の思うような席は取れないことにはなるが、もともと安いチケットを狙っていたチエだった。
オークションの出だしのころは{嵐のアリーナ席ってこんな金額するの?あのような高い金額になるようでは私には無理だわ}と思っていた。ところが調べてみると開催日が迫ってくるに従い落札価格が安くなっているようなのである。やはりチエは思ったより安い価格で落とすことができた。ただ開演日が迫っているので、こちらは決済の手続きをして、チケットなどは現地での手渡しにしてもらうことにした。万が一、そのチケットを出品していた韓国人が会場に来なければ入場は不可になることもありえる。けれどそんなことは言ってられない。
{考えてみれば行方不明になっている愛早苗は嵐の台北公演を観に行ったということだった。私はスタンド席だったけど、あのとき彼女はアリーナ席で楽しんだということだった。彼女は、どのようにしてチケットを購入したのだろうか?もしかすると、私と同じようにオークションでだったのだろうか?}とふと思い浮かんだ。そして{どちらにしても彼女とチエは台北で同じ嵐の公演を見ていたのだ。今度のソウル公演にもし早苗が来ているものならば見つけてみせる。彼女が嵐ファンならば、なんとか見つけられるところがある、、}とチエは意気込んだ。
チエは手帳を出して早苗のスケジュールをチェックした。
10/31(金)ソウルへ向け出発予定。
11/1(土)嵐14:30追加公演と19:30ソウル公演がある。 
11/2(日)嵐14:00と19:00ソウル公演がある。
11/3(月・祝日)夕方の便で帰国予定のはず。
11/4(火)東京の勤務先に出社予定。          
チエは手帳のスケジュールを検討しているうちにうとうとした。
飛行機はソウルに到着した。
10月末のソウルの街は日差しは温かいが風は冷たく肌に触れた。チエはリバーサイドホテルに到着するとすぐにチェックインし、翌日の31日に早苗がチェックインするかどうかを調べることにした。韓国語がわからないといってもそこはなんとかなるもので、ありったけのかわいさと困った表情で、愛早苗という小柄な日本人女性を探しに東京から来たことを一生懸命に話した。すると日本語が話せる年配のフロントマンまでが対応し探してはくれたが、いまだチェックインをしていないという。もちろん仮名でチェックインをすることもありえるから、彼女の写真を渡したのはいうまでもない。
だが早苗の気配が感じられない。
11月1日には、嵐のコンサート公演日になる。

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