1-29 韓国の嵐ファン


チエは嵐のコンサートが始まる前にその会場となるフェンシング競技場の周辺で早苗を見つけることができなかった。
このソウルの会場では、日本のどの会場よりも厳しいチェックが待っているように思っていたのだが拍子抜けがした。というのはチケットを見せると、早く行けとばかりにバッグの中をちらりと覗いただけで通過させてしまうのだった。
{あれっ、、こんなもん?}と会場入り口でのチェックを通過したチエは思った。
会場に入ってみると日本のコンサート会場とは違う一種独特のざわめきが漂っていた。
ざわざわする人々の気配と雑多な話し声、そのざわめきがときどきうねりをあげるかのように強弱しながら膨らむ。
しばらくすると会場が一瞬、静かになった。すると突然、会場全体が絶叫する。
空気は破裂寸前に膨張し、ときに叫び声がつんざく。まだ開演していないのにである。
するとしばらくすると確かに予期していたのだろう。
突然、先ほどとは違うような会場全体がどよめき響く。それとともに一種異様な雰囲気とともに「嵐」が現れた。嵐が歌いだし踊りだす。間髪を入れず一緒に総立ちした観客も大声で歌い踊りだす。会場は最初から大盛り上がりである。
日本や台湾と韓国のファンとのパワーはそれぞれ違いがある。どちらも熱狂的なのは共通であるが韓国のファンは一味違うようである。いたるところで大合唱が響いて群集からの圧力のような雰囲気があり、まさに熱風が押し寄せては膨らむというにふさわしい。観客みんなで歌う熱風がコンサートをしている「嵐」を包み込むのだ。
チケットが取れないで会場の外にいるファンは場内から漏れてくる嵐の歌に合わせて大声で合唱し踊り、ときとして叫ぶ。
そんな熱い韓国のファンの前だから終了のときがきて、その嵐が終了の挨拶をしてもアンコール熱風はやまない。いつまでも続くことになる。二度や三度や四度では納得しない韓国の嵐ファン。そのアンコールに応える嵐はいつもより、長い時間の延長になったのは自然の成り行きだった。
もし早苗が嵐のコンサートを観るとしたら、アリーナのいい席をとるはずだと聞いている。
実際、チエもアリーナ席をとり、アリーナ席のファンの中から早苗を探すことを試みた。
早苗は150cmすこしくらいの小柄の女性だから、できるだけ見落とさないように気をつけて探してみたものの、くやしいけれど早苗を見つけることができなかった。
それに何人もの韓国人や日本人の嵐ファンが行方不明になっている早苗のコピー写真を手にして、その発見に協力してくれていることは嬉しかった。
だか、、いまだ誰からもチエに連絡がこない。

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