1-115 薬物の疑惑

 「ところが皆さん、、、、」とチエはまたバシッと筒状にした用紙でテーブルを叩きつけた。
思惟にふけっていた優子、織江、詩、龍それぞれがチエを注目する。
「、、、この李という男を当然、シンガポール警察は取り調べました。
早苗さんのことで嘘の証言をしていたのですからね、、、ですのでシンガポール警察はなんとか何日か拘束するようにして取り調べたのです。
ところがこの男、、、吐かない。
肝なところにくるとのらりくらりとして肝心なことを吐かない。
ついには自分の手帳を見せて早苗さんのシンガポールに滞在していた日々のアリバイを示したそうです。
当然、警察は裏を取りますが、調査してみるとそのアリバイが成立したそうなんです。
となると李の嘘の証言だけではいつまでも拘束ができないそうです」とチエは皆を睨みつけるように言い放った。
「、、、なんて図々しい、、、、」
「本当にアリバイが成立したの?」
「ほんとに疑わしいわねぇ、、、」
「いや、アリバイが怪しい」
優子、織江、詩、龍は互いに顔を見合わせながらひそひそと話し出す。
「、、、そう、、シンガポール警察は言っているのです。
ですので一旦、李は警察の拘束から離れたそうです。いつまでも拘束できませんからね」
「、、、、、、」
「ところが、、、」バシッ!! バシッ!!
「ここです。、、、」バシッ!!
「何?」
「何?、、?」
「ここに新たな事実が判明したのです」
「何?」
「ん、、、、、?」
「それが、豪華客船ピュアプリンセス号で死んだミセス、ジュリアことミセス、張ジュリアの体内から薬物が、、、、」
「ええっ、、、、!!、、、、、??」

「出たそうなんです」
「薬物、、、どんな?」
「そうなんです。現在はその分析調査をしているそうなんです」
「そうなると、、、」
「そうです。皆さん、、、ここです。
こうなると彼女が船で使っていたスィートルームの部屋とその船に滞在していたときに関係していた人をまず調べることになったそうなのです」
「当然、、となると疑惑が違った方向に向かっているということ?」
「そうなんです。もちろん私たちにとっては早苗さんのことはあります。
ですけれど、それだけじゃあ、ないんです」
「ややこしいわねぇ、、」
「で、どこまでわかっているのだろう、、その薬物って?」
「それなんですが、、優子さんと織江さんにお聞きしたいのですが、お二人から見て誰が関係していたと思われますか?」
「船で行われたパティオパーティというものがあって、そこで見た光景を思い出すと客船の船長は彼女を船の大株主だとパーティに参加している大勢の人たちに紹介しましたね。
そして彼女の誕生日の祝いが始まった。

ですので関係していた人といってもそれぞれの知り合いや仕事関係もありでしょうしね、、、しかし、、、」
「しかし、、、」
「しかし、、聞くところによると彼女はお酒が大好きでその誕生日会では結構、ぐいぐいグラスをあけながら、お客と談笑していたのです。

つまりはそれらは表向きの関係でしょうね。
ところがそこに新型ウィルスのことが浮上したのです。
彼女、磊落というか自由奔放な感じのする女性に見えましたが、結構、神経質らしいのです。ですので部屋に戻って誰かと相談したと思います」
「誰と、、?」
「そういえば、アメリカから来たドクターアデナウアーとかいう人がたまたま船に乗っていたそうです。そのウィルス研究の専門家というか権威ということでしたから、船に常時いる医者と共にそのドクターアデナウアーにもジュリアは相談はしたでしょうね」
「ミセスジュリアは新型インフルエンザで陽性だったというのです」
「ほう、、、」
「ところが、シンガポールの港に着く前に部屋のベランダから落ちて死んだ。
密室の部屋のベランダから落ちて死んでいた」
「密室?、、、」
「というのは、、、、、、、」

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