1-113 嵐ファンネットワーク

「その前に、、、優子宛に招待状がフランクフルトから届いています」と龍が手を挙げて発言した。
「私の先生のドクタークルト・ベルトハイムからです。先生に早苗の仕事や事件のことを話しましたら、ぜひこの機会に優子にお話ししたいことがあるのでフランクフルトにお越しくださいとのことでした」
「龍、ありがとう。了解しておいてください」
しばらくするとドアチャイムが鳴った。
ドアを開けるとジーパン姿のチエがかしこまって立っている。
優子が探偵社「二人の幸せ研究所」のスタッフであるチエを紹介するとチエは何度もお辞儀しながら前へ進んだ。
「はじめまして、、、千秋チエと申します。チエと呼んでください。
皆様が早苗さんと同様に嵐ファンでいらっしゃることをお聞きしました。
私はご案内のあったように探偵社に勤めておりますが、まだ日が浅いので調査力も知識もありません。
しかし皆様のお力になりたいと思い参上しました。よろしくお願いします。
私は早苗さんの件で嵐の海外公演会場だった台北、ソウル、上海での調査をしてきました。
残念ながら私の見る限り、各会場内外で早苗さんのお姿はありませんでした。
私が早苗さんを探したこと以外に考えたのは早苗さんはどうやって嵐のコンサートチケットの良席を入手したのかしら、あるいは入手する予定だったのだろうかということでした。
ジャニーズのチケットは海外では人気が高いのです。
現地ではチケットの先行販売は当然されるのですが、開演日には現地での当日券も発売されます。
上海の会場周辺では嵐のコピー商品をたくさんの人たちが堂々と売っていました。
ダフ屋も横行していまして怖いくらいだったのです。
嵐の人気はとても高く、特に中国の人たちにとっては非常に高額のチケットのはずですが、欲しい人たちがわんさかいました。その中には日本から来た人たちで偽のチケットを購入したり偽札で騙されてしまった人たちもいました。
上海のコンサート会場でのスタンド席では、空席の一角があったり、招待客の様子の一群の区域があったりと台北やソウルの公演会場にはない雰囲気がありました。

やはり良席となるとチケット取得は難しいと思いました。
また各会場で早苗さんを私一人で探すことは無理がありますので、現地で知り合った嵐ファン人たちに早苗さんを探している旨を伝えましたところ、嵐を観に来ている台湾、韓国、中国、香港、タイ、インドネシア、はてはソビエトなど遠いところからのさまざまな国々の人たちと知り合いになって続々と協力してくれることになったのです。
予想外の展開でした。
どこの国でも悪い人たちもいるけれども親切な人たちもたくさんいることにいまさらながらと思いました。
これも嵐のもつご縁だと感謝しています。
のちに私は早苗さんが優子さんに送った嵐の動画の中から男性らしき人の姿を見つけました。
私、その男性の姿の写しを持って台北に飛びましたけれど、やはりこれはといったことは出なかったのです。
ですが今回、優子さんと織江さんがシンガポールの出来事で浮上した謎の男が、台北で嵐を撮っていた男だったのではないかと思いました。
嵐のチケットの取得もその男なのではないかと感じました。
それはシンガポールのDragon社の担当者の一人だった男、李光洙 ( リーガンス )です。
と突然、チエは手に丸めていた用紙で自分の前にあったテーブルをバンバンと叩いた。
優子、織江、詩、龍はきょとんとしてチエを見つめている。
「それで、、、、、、皆様、、、」まるで講談話でもあるかのように妙にチエの声が上ずっている。
「私、、、悔しいんです。台北、ソウル、上海と行ってみましたが早苗さんのことはほとんどわからずじまいでした。
そして早苗さんがあんな悲惨なことになってしまいました。
嵐ファンの日本人が殺されたことに私としては煮えくり返りました。夜も寝られないこともあります」
そこで私は台北、ソウル、上海で知り合った嵐ファンのネットワークに李ガンスの情報を流してみたのです」チエは頬に赤みを帯びながら話を続けた。
「すると返ってきた情報というのが、李ガンスという男は、シンガポール出身ではないのではないかということでした」
「というと、、、」
「まだよくわからないのですが香港 ( Hong Kong ) らしいというのです」
「香港というとイギリスから中国に返還されたという、、、」
「そうです、、一国二制度の香港、、、、、、、、」

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