1-73 初めての異常

{ 、、、なっ、、、}純一は自分に異常を感じ始めている。

いままでにないものを感じている。
{、、どうしたんだ、、、}すでに背中と両脇に冷や汗が出始めていた。それでも自分の資料を片付けているふうを装っている。その純一にクリーンシェア社の営業担当部長の鈴木健太がづかづかと近づいてきた。
「泉社長!! やっと動き出しますね、、、感慨深いですねぇ、、時間がかかりましたものねぇ、ここまでくるのに、、社長っ、

うちの営業はみんなこのプロジェクトに期待しているんですよ。なんてったって業界初の新製品ですからね。力が入りますよ。

それにこれは、、すごい商品ですよ、、、売れますよ。絶対に」
「ありがとうございます。、、これからですよ、、、確かに製品には自信がありますし、、クオリティも実証済みです、、大いに頑張りましょう、、それでと、ごめんなさい、ちょっとまだ打合せが若林さんとありますので、、、、鈴木さんとはこんど詳しく打合せをしたいこともありますので、、、どうでしょう。そのときにでも、、、、」と努めてにこやかに応えたのである。
「わかりました、それじゃあ、楽しみにしてますよ、一杯やりながらということにしましょうよ、ねっ、社長!!」と満面に笑みを残しながら離れていった。
純一は片手をテーブルについて立っていた。背広の中の肉体には支えるために力が入っている。
すぐさま奈美に目配せをする。
近寄ってきた奈美に純一は小声で一言、話しかける。奈美は何か驚いた様子で、会議室のドアを閉めに行く。すでにこの会議室には奈美と純一だけになっていた。
戻ってきて「どうしたの?、、、、」純一に話しかけた。
「うん、、なんでもないんだが、、ちょっと最近疲れ気味でね、、、、少し休ませてくれ、、、、疲れが出ると体が、、、、、

ちょっと横になれるところはないだろうか?、、、」
「上に個室の休憩室があるから、そこに行く? 誰も来ないわよ、内側から鍵も掛けられるし」
「うん、そうしたい、、、」
純一は自分の打ち震える身をようやく動かした。重く感じる鞄を奈美に持ってもらいたかったが、そう言い出せない。奈美の肩も借りたくなかった。
自分の鞄を持ち、奈美のあとに従ってゆっくりと歩いていく。
「どのくらい歩く?」と奈美に尋ねるのがやっとだった。

「エレベーターで上がって少しだけど、、、大丈夫?、、、」奈美は顔を斜めにして見つめている。
「、、、、、」純一は返事もしたくない。
{ 苦しい、、、}次第に痛みの波が体中を襲ってきつつある。
意識ははっきりとある。{ 呼吸はできるのだが、、、、、、、何故だ }奈美の歩みの速度にもついて行けそうになかったが、純一は力を振り絞った。こんなところで倒れるわけにはいかないのだ。
奈美に案内された休憩室には幸い誰もいなかった。ソファに倒れ込んだ純一を奈美はそばで心配そうに見ている。
{ どうなったんだ?、、どうしたんだ、、、俺の体は、、 }純一は休憩室の天井を見つめた。

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