1-100 ウイルス変異特効薬

「私が診たところ、やはり新型インフルエンザだと思われます。ここでは可能なかぎり治療を施します。

明日、シンガポールに到着しますので、入院させて精密に検査を行い、対処するということで母親の了解を得ました。ドクターアデナウアーも同意見です」
「新型インフルエンザはとても怖いものだと聞いているわ、この船には薬はあるの?そんな呑気なことでいいの?」
「薬は沢山はありませんが常備はしています。その薬についてはドクターアデナウアーがよくご存じだとのことです」と言って医者はドクターアデナウアーを促す。
「ミセス、ジュリア、あの女の子を診た限りでは、熱が急激に上がって、手足に少し痙攣を起こしています。あのように急激に変化しているのは、あまり見たことがありません。確かに非常に危険性があります。ここのドクターは甘く見ているようです」
「私はその子にくしゃみをかけられたのよ!!」と突然、ヒステリックな声をジュリアは出した。
ドクターアデナウアーは冷静に制するように話を続ける。
「新型インフルエンザについてのわが国での研究では、そのための特効薬を用意しています。その一つがここに常備されているタミ●ルというものです。認可されております。アメリカからヨーロッパの各国、日本、中国までたくさんの国から要請があり、広く輸出できるようになりました。私も間接的に関わっていますので存じております。幸いにもこの船には少しの量ですがそのタミ●ルが備えられているとのことで嬉しく思います。私はタミ●ルだけではなく、もっと強力な薬を開発しようとしているのです。ウイルスというのは変異を起こすことがよくあります。その変異を遂げているウイルスが、さらに変化をして今後とも発生することが予想されているのです。それはどこから、いつ発生するのかわかりません。甘く見てはいけないのです。そのために危険なウイルスについてヨーロッパやアジアなどに行って情報を収集しているのです」
「そのタミ●ルとかなんとかいうお薬をすぐに私に用意して頂戴!!」
「いえ、ミセス、ジュリア、新型インフルエンザに罹っていなれば、その薬はいらないのです」
「でも心配だから、私のを多めに用意して、すぐに。ドクターアデナウアーお願い、私をまず検査して!!それから、私のここにいるこの男性も至急、検査をお願いします」
「わかりました。しかしここは他国であり、私はこの船の医者ではありませんので、業務としての許可が必要になりますし、、、」
「ドクターアデナウアー、おっしゃる意味はよくわかります。船長、ちゃんと報酬は払ってください。緊急なのですから、充分にね。なんなら私からもお支払いします。それと文書での許可証を出してあげてください」
そばで聞いていた船長は「了解しました。ドクターアデナウアーよろしくお願いいたします。ただ問題は、新型インフルエンザのための十分な検査がこの船ではできないことです。ですので夜も遅いのですが、緊急性を考えて、これからシンガポールでの受け入れてくれる病院側と打ち合わせを行います。ドクターアデナウアーのアドバイスをいただきながら、うちの医者で検査ができるのかどうか?それともし検査ができたとして、お客に陽性が出た場合の薬、たとえば今お話にあったタミ●ルが十分に足りるのかどうかをお聞きしたいと思います」
「薬の量は十分とは言えないと思います。それと私どもではこのような新型インフルエンザやウイルスというものについては未経験であり、詳しく検査することはできません。あくまでも症状やレントゲンなどの状況から判断する程度です」
「とすれば、この船を予定より早くシンガポールへ向かわせることにしましょう」と皆の意見が一致した。
そして、その部屋にはミセスジュリアとドクターアデナウアーだけが残った。
ドクターアデナウアーは防具服になり、ジュリアの検査が行われた。
その結果、、、ジュリアは陽性だった。
「あぁ、あの女の子が私の顔にくしゃみをしたのよ。それに違いないわ。あれから、だんだん調子が悪くなっているんです」
「ミセス、ジュリア、私も薬は持ち合わせています。新薬もあります。しかしこの新薬のほうはお使いにはなれません。まだ臨床の途中で許可を得ていないものなのです。ですので、まず私の持っているタミ●ルを少しお分けしておきましょう。ですが内緒ですよ」
「いや、ぜひその新薬のほうもほしいわ。お金はいくらでも出します。絶対に内密にします。なんとかして」
「いや、、、それは、、、、」

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