1-78 静かなる池に小石を投げ入れてみる

 
ここは探偵社「二人の幸せ研究所」である。
「これです」とチエは切り出した。
百聞は一見にしかず。
問題の部分は話すよりも上司の和田にはyoutubeにあるshotennokiを見せたほうが早いのだ。
「、、、どれ?、、、、」
ジャニーズの嵐が朝、台北の宿泊していたあのホテルから出てミニワゴン車に乗り込んでコンサート会場に出発する様子をチエは何度か再生させている。
「もう少しすると、、、見えてきます、、、、そう!!このシーン、、これです。この男です」
「う~~ん、、なるほど、、男のようだな、、、撮っているようだ、、手に持っているのはカメラのようだな、、、」
「そうです。しかも嵐の日本人スタッフからも台北のこのホテル従業員からもこの男がカメラで撮っているところを制止されていないように見えるのです。かといって周りの嵐のファンの女性たちが嵐の出入りにカメラを向けているような気配がないのです。つまりビデオカメラや携帯のカメラを嵐の動向に向ければ、関係者から阻止されることは目に見えている。少なくとも禁止されている雰囲気があるはずだと思うのです。ところがこの男はすべての人々の前で堂々とこの動画を撮っている。この男は肩肘をどこかに置いて、嵐の出入りと乗車した車の動きを撮っているように見えなくもない。これって、、、、、」
「よく見つけたな、、我々はまったく考えもしていなかった、、、チエ、大きな手柄だ。よく見つけたな、、、。この前から気づかされたけど、お前の直感のするどさと聞こえない声を聴きだす能力、それと図々しさは天下一品だな、、、」
「褒められているのか、けなされているのか私、わかりません」
「愛早苗さんのご両親には報告しておくから、明日にでも台北に飛ぶ予定にしてくれ。現場に行ってこの真相を探ってきてくれ」
「わかりました」チエも和田もケンも紅潮している。
「ケンはこの動画をもっと精密に見えるように編集してほしい。顔がわかるようになるか?」
「はい。この状態だと映っているこの男の顔がはっきりとわかるようにするのは難しいとは思いますが、取引先のオフィサーソフト社へ行って画像処理について相談してみます」
「いや、和田さん、オフィサーソフト社は早苗さんの勤務先ですよ。とすれば万が一ですけど、万が一ですけれど誰かが知っていることがあるか、あるいは関係している可能性があるかもしれないから、今のところ内密にしておいたほうがいいのではと思うんですけど?」
「チエ、お前は戦略家だな?確かにその可能性もないとは言えない。私もそうよぎったけれど、その逆を考えているのだ。あそことは昔からの取引先だ。うちとしては現在、我々のアイデアをオフィサーソフト社にソフト開発委託しているものがある。それもだいぶ進行しているようだ。そんな取引関係だからここからがうちとしては大事だと考えているんだ。そこでだ、チエお前もケンと同行して先方の如月専務や技術者と会って反応を感じてきてくれ。今回のこの早苗さんの件の情報や作業内容を内密にしておいてくれと頼んでおくんだ、いいか?そうなればどうなるか、、、、、わかるか?」
「、、、わかりました」とチエとケンは頷いてはみたもののはっきりとはわかっていない。
「静かな池にポツンと小石を投げ入れたらどうなるか見てみよう」

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