1-114 錯綜の疑惑

「でもこの李ガンスという男、早苗とは仕事関係だよね。
優子の顔を知っていたというのもいつからなのかしら、、、、」
「私が早苗と最後に会ったのは去年の夏ごろ、その日一緒に居酒屋に行って、そして早苗のマンションにも行った。それ以前は会ったのは、その1年以上も前になる」
「だとしたら、その居酒屋で飲んでた日、、、、」
そのとき、チエが口を出した。
「おそらく早苗さんとご一緒のときに優子さんも撮られたのだと思います。
それは早苗さんをターゲットにしていたのか、それとも優子さんもだったのかはわかりません。
李が重要な容疑者だとすれば早苗さんとは仕事関係でしたから。
ということは早苗さんの身辺や交友関係を調べていたと考えられます。
シンガポールの船旅で優子さんと織江さんがショータイムでミセス、ジュリアと李ガンスと顔を合わせた時に優子さん見たときだけ驚きの表情を見せたのは李だけでしたよね。
だとしたら李は優子さんの顔が印象に残っていたか、あるいは覚える必要があったのかもしれません。
東洋人の彼が、同じ東洋人である優子さんを覚えていたということは、優子さんのお顔だけでなくある程度、知っていた可能性がありますよね、、、、、すぐに反応したということは。
織江さんには反応していないのですから。
ミセス、ジュリアは優子さんも織江さんとも見ただけでは反応しなかった」
「怖いわね、、、」
「そうです。
ですので日本でもシンガポールでも警察にはその旨を強く伝えておくべきです。
ただ警察は起きていない事件に対してはあまり関心を持たないと思いますが、、、海外のことですし、、、、」
「私たちが早苗さんの借りていた大塚のマンションの部屋の調査によりますと、彼女が使っていた机の上に置いていあったと思われるのノートパソコンがないのです。
優子さんのお話だと早苗さんは自宅用と携帯用のノートパソコンとを一つずつ持っていたと聞いています。
机の埃の位置関係と埃数のデータ推移などを調べてみると、その自宅用のノートパソコンがなくなったのは早苗さんが行方不明になったと思われる日以降だと思われるのです。
つまり早苗さんがシンガポールに持ち歩いていたノートパソコンと自宅に置いてあったノートパソコンの両方は犯人が早苗さんを拘束した後になくなったということになります。
それに部屋の一部には何か探したと思われる乱雑さが残っていました。
几帳面の早苗さんには考えられないと思います。
ですので早苗さんの持っていた携帯電話やパソコンなどからの情報は知られたと思います。
それだけでなく早苗さんに関する周りの人たちの情報まで取得しようとしていた可能性があることになると思います。
ただし早苗さんの死で、目的は終わったかもしれないのです。
早苗さんの死から日本の警察も動き出しましたが、早苗さんの部屋からは疑われるような指紋や痕跡などは見つかっていないということてした。
それにシンガポールから早苗さんの遺骨はすでに親元様へ返されました。
日本の警察も動いてはいるようです。
しかしそれほど重要なことだと思っていないのか、新しい発見はされていません」
「いったいなんなの?」
「たとえ早苗が貴重な情報をつかんでいたとしてもそれだけで殺される所以はないはずだわ。
何かがあったはずだわ」
「その殺され方も異常だし」
「しかし早苗の身辺を調査していたとしたら計画性があるということになるわね」
「李ガンスを捕まえて取り調べるしかない、、、、」

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