1-101 疑惑

優子と織江は部屋に戻った。
旅の最終日である明日の朝には、この豪華客船ピュアプリンセス号はシンガポールに到着する。
その前の晩にあのような派手なパーティが開かれるとは。しかもこの船の大株主というミセス、ジュリアの誕生日会まで行われるとは思ってもいなかった。
ちょうど一年前の今日、早苗もこのパティオパーティに出席したということであろうか?
「ねぇ、優子、早苗は一年前の今日、このパティオのパーティに出席していたはずよね?」
「、、、、、、、」
「どうしたの?」
「もし、あの男とジュリアが容疑者だったら、この大勢人が集まるパティオのパーティに早苗と会うセッティングをするかしらと思ったの。それにジュリアはこの船の会社の大株主だと言っていたわよね。そんな人がそんなことをするかしらと思ったのよ」
「う~~ん、、そう言えばそうね。でも大胆不敵だったらありえるわよね」
「そうね、しかしその場合は早苗を安心させて、犯行をまったく感じさせないような計略をしたかもしれない。ただそんなことまで考える必要性があるかしら?」
「犯罪後に、たとえばシンガポール警察が何かを嗅ぎつけてきて犯罪者の身に迫った時のことを考えれば、そのときに堂々と言ってのける理由を考えていたこともあるのじゃないの、、、「この客船で互いに知り合いだったし、そんな犯罪を犯す関係性はないって。むしろ関係性は良かった」とね」
「織江は頭いいわね。それは言えるかもしれないわね。だけどそれはとてつもなく大胆不敵と言うよりもいけずうずうしいような感じがする。、、、だけど、、、、どこか変なのよね」
「何が?」
「ちょっと不自然なのよね。まず一つは早苗が日本でインターネットを通じてこの船のスィートルームを一人で予約していたこと。それは意図していたことだと思うのよね。それは早苗なのか、早苗自身が必要としていたのか、それとも誰かが指示したのか、たとえばあの男かもしれないし、、、」
「例えばあの男が早苗の愛人で指示していたとか?ということ?、、、、あの男は20日のパティオパーティに出席するときに、早苗のことはジュリアには内緒にしていたとか?そしてパーティが終わってジュリアには内緒であの男と早苗はこの部屋か違う部屋で密会をしていたとか?
あるいは堂々とジュリアに早苗を紹介していた?
それともジュリアも早苗と顔見知りだった?」
「仕事の関係があったとすればすべての人が顔見知りだったと言えるわね」
「なるほど、それにしても、あの男はどこからかこの船に乗船したはずよね?」
「そう思うわ。乗船したはず。最初のシンガポールかあるいは、、、マレーシアのペナン島?あの男の車に早苗は乗って行ったのだから、あの男はシンガポールとマレーシアを車で行き来できる。なんでペナン島で早苗を乗せる必要があったのか?しかも再び、早苗はこの船に乗船している。そのとき男はどうしていたか?」
「あの男はどこからでもこの船に乗り入れることができそうね。もしあの男が乗船していたとしたら調べればどこから乗船したか、どこの部屋にいたのか、どこで下船したかくらいはわかるはずだわ。しかしなんか厄介なことだわね。なにか訳が分からないものが蠢いているようにも感じるわ。例えばオフィサーソフト社とDragon社のプロジェクトが進んでいるということは友好だったはず。さらにより友好性を高めるために早苗を呼んだ?それだったら早苗を招待してもいいのだから、それがないのだから、その線は消えるわね」
「そうね、あのパンフレットにはDragon社の社長の肝いりで作ったものたとオフィサーソフト社は言っているように、相当力を入れたいという意思はDragon社のほうが強いようね。それにあの男が関わっている以上、内情をジュリアが知らないわけがない。しかし早苗を招待していないとなると、ただ単に早苗がこの船の観光を選んで予約していたのだから、たまたまこの機会に三人が巡り合ったということもありえるし、、、ん、、、わからない?」
「ということは仕事の関係では順調にいっていた。しかし何か隠された何か問題があったか、その問題は公にできなかった。会社関係で処理できないことがあった?あるいは会社関係ではない別の問題を抱えていたということ?」

「、、、、いったい、あれほどのことを、、なぜ?」
「どちらにしても明日からだわ、とにかくシンガポールに到着してから、、、だわ、」
「というと、、、」
「そろそろ警察に、、、、」
そのとき、、、コンコン、コンコン、、、、、、ドアにノックが入った。

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