1-112 岐路


「あのとき、、、もしもこうしていたら、、、、」

「あの頃の自分にもう一度、戻りやり直したい、、、」

と過去を振り帰ることは誰もが体験することだろう。
その当時の選択肢をどこまで煎じ詰めていたのかというと、

そうではなかったと気づくことがある。
それに煎じ詰める方法がわからないということもある。
いや煎じ詰める必要性さえ考えないかもしれない。
川の流れのように、それぞれの無数の粒子は無限の選択肢の中から常に一つの行動を選びながら動いている。
後になってああすればよかったんだなと思うことを、今の身に迫る現実から、よりよい選択を絞り込んでいさえできれば、その後にたとえ失敗を重ねることがあったとしても最終的に思い願うことに到達するのかもしれない。
この日、saveearthの優子、織江、詩、龍が池袋駅近くのリセリアホテルのツインルームに集まった。
龍は昨年の夏の休暇を利用してドイツから帰国し、saveearthの会議の際に参加したが、成田に一泊しただけですぐにフランクフルトに帰った。
しかし今回は、数日間、日本に滞在することになっている。
「シンガポールでの早苗のことは以上の状況でした」
優子は一通り、シンガポールでの出来事を説明した。
「早苗のご両親にも私たちが体験したシンガポールでの出来事を報告してきました。
早苗の死までの心情を私見をまじえてお話をしましたが、それでも親御さんやご家族にとって早苗がこの世にいないということがいかに大きな事なのかを再認識しました。
それとともに現地の客船ピュアプリンセス号でのミセスジュリア ( 張、ジュリア ) が死んだことで、今後は何か危険性のあることに巻き込まれる恐れがあるのじゃないかと逆に私たちのことを心配してくださっています」
「早苗が行方不明になって連絡がとれないとのことを最初に報告してきたシンガポールのDragon社の関係者の一人である李光洙 ( リーガンス )が、実は早苗の事件に関与していたとの疑惑は確かに大きいわよね」
「それと早苗がピュアプリンセス号のスィートルームに一人で予約していたのもなにか男を感じさせるわよね。早苗が初めてのシンガポールでの船旅を楽しみたいと思っていたとしたら、その筋はどうなのかしら」
「その可能性はあるよね。それに仕事関係のその疑惑の男、李とかいう人が優子の顔を知っていたといのはとてもおかしいわ。
李と優子は会ったこともないのに。
関係していたのは仕事関係で早苗とだけのはず」
「そうなんだよ。
私もその点は疑問点だわ。
李も優子も互いに会ったことがないはずなのに、李は優子を見たときの驚きの表情を見せたという点ね。

知っていたというしかない。
というより優子の顔を覚えておくほどの必要性はあったということよね。
人の顔って会ってもいないのに覚えることってあまりないよね。
特別なことがない限り」
「それにこの李という男、数日前に早苗とペナン島で会っていたはずなのに日本のオフィサーソフト社にも警察にもそんなことは一言も話をしていないどころか、会ってもいないと嘘を言っていた。この男が犯人じゃない?」
「当然、シンガポール警察にとっては李光洙 ( リーガンス )は早苗の事件の最重要人物になるはずだわね。
相当危険な男かもしれない。
それに私としては死んだ張、ジュリアの夫である王紅東、それからジュリアのご両親などの人たちとシンガポール警察を通じて、「会いたい」という希望は出しています」
「ミセス、ジュリア ( 張、ジュリア ) とかいう女性がピュアプリンセス号でベランダから落ちて死んだというのも何か衝撃的よね。
シンガポールを出港した豪華客船ピュアプリンセス号が新型インフルエンザが発生したことで急遽、プーケット島からシンガポールへ戻る途中のことらしいから。
それは未明から早朝の間だったというのだから、まさに早苗が死んだと思われるシンガポール海域付近じゃない?」
「そういえばそうかもしれない、、、船の航路はあまり変わらないし、シンガポールの港に近づいていた付近には違いないわ」
「私はシンガポールへ織江と一緒に行ってみて、なんとなく早苗を感じたことがあったの。
まるで早苗が死んでいないかのように」
そう優子が話すと織江、詩、龍は静かにおのおのの思いにふけって静かになった。
「それで、今後の事なんだけど、、、皆さんに提案します。私もいろいろなことがあるんだけど、、、」と皆の様子を見ながら、優子の目にはうっすらと潤んでいる。
「それは早苗が目指していたことを引き継ごうと思っているのです。人間の極小生命体についてです。これはもう少し広範囲に考える必要があるとは思っています。いままでは早苗と龍と詩とが連絡を取り合って進めていたものですが、もともとは私が言い出しっぺのことがありますので、今後は時間を取りながら私も参加して皆さんと協力したいと思います。できれば織江も参加してほしいわ」
「わかった、、、早苗の意志を引き継ぎましょう」
「そうこなくちゃあ、それにしても優子、なんかあったの?」
「うん、個人的なことはまた後で話すよ。
ところで今日はここで会の今後の方針を決めた後は、他にもう一人、ここに呼んでいます。
「二つの幸せ研究所」のチエという女性スタッフです。
この人、実は私たちと同じ嵐ファンです。
早苗の事件に関して、台北、ソウル、上海と嵐の海外コンサートに実際、参加した人なの。そこでいろいろと調べてくれたというの。
早苗が私に送ってくれたビデオに写っていた男を発見した人でもあるのよ」

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