心の計画

1-161 心の計画
「その人」を中心にしていた行列に変化が起きつつあった。
行列は少しずつ動いてはいる。
けれど「その人」のそばに居残りだした人たちがいた。
その人たちは行列している人たちの世話をしたり、話を聞いたり、並びの列が乱れて喧嘩しないようにしたりして「その人」がやりやすいように手伝いを始めた。
{ あぁ、、、、 } うむいは感心した。

人と人の繋がり。
うむいの場合には、このような関係を持つ者はいないけれど家族がいる。
{ うむいの世話をしてくれるのは、お母さんやおばあちゃんたち。
すぐに思い出したのは、つい最近のこと、、。
とても美味しいと感じて、思わずニコニコして食べていたら
「ずいぶん今日はおいしそうに食べてるわねぇ、うむい」って、お母さんは嬉しそうに笑いながら言っていたわ。
おばあちゃんが食事を作ってくれたときもそういうことがあった }
うむいは、心が揺さぶられた。
{ こんな大事なことが身近にあった。いままで気づかなかった、、、
「その人」はたくさんの病気の人たちを助けていた。
するとその人たちは、痛みや病気が良くなるのでとても喜んでいる。
それだけではなく「その人」のために手助けしたい人たちも出てきたのだ。
これだ、、!!}

うむいは大きな発見をしたと思った。
{ だとすれば、今日からでもお母さんやおばあちゃんの喜ぶことをしたら } と思う。
これからは、うむいが、ぐちゅぐちゅと食べていたのを止めることにする。
それにお母さんやおばあちゃんが作ってくれた食事に不満や愚痴を言うのを止めよう } と心に誓ったのである。
毎日のことだし。
なるべくおいしそうに食べたら、きっとお母さんやおばあちゃんは喜ぶことだろう。
{ 喜んでもらえれば、自分も嬉しいし。

、、、それに、、。
うむいは、まだ子供だから何かやりたいことがあっても簡単にはできないことが多い。
お金も力もない。
しかしお母さんやおばあちゃんが、うむいのことで喜んでもらっていたら、いろいろと協力してもらえるかもしれない。
もしかすると、うむいのほしいものが手に入るかも、、、 }
うむいは「くっっっ、、つ、」と思わず笑みがこぼれた。
しばらくその楽しい想いを巡らしていた。
ところが、、、、。

妙に不安が襲ってきた。
いや違うかもしれないという迷いが起きたのである。
「その人」の行動は、もしかしたら、うむいが思うことと少し違うかもしれないと思ったのだった。
それは何が違うのだろうかと、、。
またうむいは考えて考えて考え抜いてみた。
するとその答えはやはり違うように思う。
「その人」は治療をしている人々から、喜んでもらっていた。
でもお金やお礼を貰おうとしていなかった。
そうしているうちに「その人」にありがたいと思う人々が自然に手伝うようになったのだ。
あぁ、、「その人」も手伝う人も見返りを求めていなかった。

ここが大きな違いだったかも。
{ 純粋な気持ちが、つい自分のためという横道にそれた考えに行きそうになった。
うむいは「ふぅ、つ」と息をついた。
うむいは見返りを望む気持ちが起こりそうだったのを反省した。
{ もう少しで迷いの道に行くところだった }
そこで、うむいは決めたのだった。
{ 余計なことを考えすぎるな。
お腹が空いていたとしても騒がないようにしよう。
それで、とにかくお母さんやおぱあゃんの作ってくれた食事に不平不満を言わないで、おいしそうに食べることにしよう。
そうすることでお母さんやおばあちゃんに喜んでもらえるのだ。
あとのことは考えない。
見返りも考えない。
余計なことも考えすぎるな。
、、とにかく、おいしくいただこう。
、たまには美味しくないときもあるけれど、そのときはそのときだ。

目をつぶって美味しそうに食べよう }
そういうふうに考えていくうちに、うむいには新たな問題が持ち上がった。
確かに「その人」は、病気の人を治してあげたいという純粋な気持ちで人々を治療していた。
しかしその行列の中に、うむいとは違う意味の不純な人たちがいたのである。
その人が治療をしている行列に加わって、自分の番になってみると、痛みがなく病気でもないのに「治らない」と言って悪口を言っていた。
それだけでなく、その仲間たちが、よってたかって「その人」を非難したり罵っていた。
{ なんで?あんなことができるの❓ } とうむいは思う。
良いことをしている「その人」に向かって悪口だけでなく罵っているのだから、邪魔をしようとしているとしか考えられない。
お母さんだったら、恐ろしい声を出して怒鳴りつけるかもしれない。
うむいは、あんな高音のつんざくような大声は出ないけれど睨みつけることはよくある。
だけど「その人」は違った。
「その人」は、悪口を言ったり罵ったりしていた若い男女に向かって、睨みつけたり怒鳴ったりしなかった。
うむいには不思議でしょうがない。
もしそうだったら、相手にやられっばになしになるんじゃない❓

それに悔しいし許せないことだ。
たまたま周りの大勢の人たちがいて、騒ぎ出したからよかったと思う。

もしいなかったら「その人」は、いつまでも罵られ続けたり治療の邪魔をされたと思う。
{ そんなときどうするの? }
うむいはあのときのことを思い出して、そのときにズームをかけてみた。
すると「その人」の表情が見えてきた。

悪い人たちにもいい人にも同じように温和に接しているのが見えてきた。
{ 、、、これって? }
でもうむいは、さらに思い出した。
{「その人」の瞳でじっと見つめられたら、鈍感なうむいでも夢心地になる。
だから、あの悪い人たちもいつかはメロメロになるに違いない }
「そうか、そういうことだったのか」

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