1-133 不思議な子

うむいは優子の隣りでちょこんと座り所在なさそうにしている。
しばらく沈黙が流れている。
「この子は、、、どうも普通の子とは違うようだ」とうむいを見つめながら坂東医師は優子に切り出した。
「えっ、、何とおっしゃったのですか?」
「この子はそうとう難しい子のように思う」
「どういうことですか?」
「なんというか、、、いままで見たことがないような子だね、、、」
「、、、、、」
「よくなれば素晴らしいことになるが、もし間違いでもしたらとんでもないことになる」
「そうですか、そんな感じがしますか、、、
この子、ずいぶん変わってるんですよ、先生」
「ん、、?」
「まあマイペースといえばそうなんでしょうけれど、この子一人でいてもあまり寂しがらないのです。

むしろ楽しんでいるような感じなんです。
普通は親に甘えるでしょう、ママ、ママって、、もちろん甘える時もありますよ。
だけどほとんど自分の世界にいるとでもいうか、私から見ると何を考えているのかわからないところがあるのです。

ところが突然、大きな声をだしたりすることもあるし、、」
「そうだろうね、、、」
「どういうことでしょうか?」
「私の診るかぎり、この子は自閉症ではなさそうだ。
というより精神的に子供ではないような、かといつて大人でもなさそうな。
不思議な感覚がある」
「そうですか。私としては子供らしく甘えたり、ときに騒いでほしいときもあります。
でも女の子ですから、おとなしいのはいいんですけどねぇ。
ところが先生、私が用事がある時にはこの子をよく実家に預けるんです。
それで最近、変わって来たんですよ実家が、、、」
「ん、、、?」
「実家には父と母、それに弟が棲んでいます。
母親はあまり変わりませんけれど、父親と弟が変わってきたように思うのです」
「、、、、」
「というのは、この子とても可愛い顔をしてるでしょ。
ですので、実家ではうむいは可愛いね、可愛いねってとは言っていたのです。
ところが、しばらく何度か実家に預けるようになってからは、私がうむいを引き取りに行ってみると、、、
何というか、父も母も弟もこの子に気を遣うようになっている気がするのです」
「この子に対して気を遣う?」
「何か意識するようになっているという感じです。
実家のみんながなんとなくこの子のことを気にしているようで、そんな気配が家族の間で生まれているのです」
「ほう、、面白いね」
「そうなんです。どちらかというとかわいがるのはそうなんですけど、大事にするとでもいうような、そんな気遣うような感じなんです。
うむいはまだ5才で私の子なのに、父母にしたら孫じゃないですか。
お客様でもないのにね」
「まあ、小さい子が身近にいると気は遣うけどね、それなりに。
でもなんとなく不思議な感じのする子だねぇ、、、」と坂東は見つめなおした。
うむいはそんな気配にぷいと横を向いた。

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