1-21 嵐の海外ツアー

早苗はウファに入店してきた優子に手を振った。宇多田はすれ違いに優子に会釈をしながら早苗のテーブルから遠ざかった。優子は「あ~、暑いわね、今日も、、、」と言いながら早苗の向かい側に立ち「それでね、今日は悪いんだけど少し早め …

1-20恋する人への想い

優子と早苗が先日、7年ぶりに訪れた喫茶店「ウファ」。その帰り際の優子は「また伺います」言ってくれたのだが、店長の宇多田は不安な気持ちで過ごしてきた。その言葉を頼りに待つ身の不安とうきうきした気分はあったものの、これまでの …

1-19 うむい

この日の朝、優子は幼い自分の一人娘「うむい」を母、君江に預けてきた。母、君江にとって3才になる初孫のうむいのあまりのかわいらしさに笑みがこぼれ「一晩でも二晩でもいいわよ」と優子に答えた。ただ娘の優子の話で医者に診せたとき …

1-18 天界の光

早苗はそのままじっとしている。一滴、瞳からこぼれた。うつむき加減の頬からあごの先端に向って涙が伝ってはこぼれ落ちはじめ、頬に伝っては流れるさまは細い川のようになっていく。そんな様子の早苗に気づいた優子もなにかしら痺れるよ …

1-17 悲しみと慈しみの琴線

「ただ私は人々の中にいても人は孤独を感じているのじゃないかと思っているの。インターネットでコミュニケーション的なものが盛んなのは、便利だとか楽しむことがあるのだろうけれど、人は人とつながりをもとうとする気持ちが強いからだ …

1-16 北朝鮮やアフリカと日本

「だけど北朝鮮やアフリカの一部もひどいもんだぜ。飢餓があっても海外からの援助物資が末端まで行き渡らないというんだから悲惨だぜ」「民衆の生活をもっとよくするために国家を改革するんだと言って革命を起こした後は、その理想とした …

1-15 差別意識と金

「紛争や戦争になるとそれどころじゃない。噂やデマや風評どころか抑圧や暴力なんかが横行する」「イスラエルとパレスチナやアフリカやアジア地域での報道を見ていると長い歴史上での問題を抱えていることと経済的紛争が背景にあるように …

1-14 理性と情緒

「僕らが、この「戦争を考える会」というものを立ち上げたっていうのは、なぜ戦争は起きるのか、そしてどうしたら防止できるか、そのために何をすべきなのかを考えることが目的なんだけど、たしかに犠牲者のことも含めて考えるべきだと思 …

1-13 競争と紛争

早苗は大学卒業と同時にソフトウェア関連のオフィサーソフト社に就職した。入社当時は事務的な仕事に携わっていたが、持ち前の負けん気でソフトウェアの開発を経て、いまでは営業のリーダー的存在にまでになっていた。ソフトウェア業界の …

1-12 超アイドル

「4枚じゃなくて1人の会員に対して1枚だけ購入可能にして、売買を禁止するのならわかりやすいけれど」「そうしてソウル形式で入場を厳しくするということ?」「それだとソウル会場でのすべての入場者をチェックするのは難しいでしょう …

1-11 購入証明書

「彼女たちはどうするのかな?」と早苗は優子に尋ねた。「連絡をとってみたけど、それぞれ忙しいらしいの」「抽選に外れたら、問題はチケットになるわね」「早苗はアリーナ席でしょ?」「うん、もちろん。どうせ行くならね。ただ台北公演 …

1-10 嵐の海外ツアー

 「嵐の歌うメロディって、ほんとにいいわよね」「大野君が言うように嵐のコンサートってまるでお祭りよね、お祭り気分で人を楽しくさせるのよね、すてきなノリのいいメロディと5人それぞれのキャラクター。それに勢いがあるから嵐とお …

1-9 浮気調査

喫茶店ウファを出た優子と早苗は池袋駅へと向かった。池袋は東京の街並みでは比較的庶民的雰囲気のところである。どこかラーメン店の多さに象徴されるように駅周辺にはたくさんの飲食店が軒を並べている。二人は久しぶりの池袋で居酒屋に …

1-7 恋心

そのおよそ2ヶ月前、、、。喫茶店「ウファ」は池袋駅から少し離れたところにある。店内のところどころに花の植木鉢をあしらえたこぎれいな女性向きの喫茶店だった。優子は大学に通っていた頃、ときにこの喫茶店ウファを利用していた。そ …

1-5 嵐のアリーナ席

 オフィサー社を出た愛早苗の両親と泉優子をJR池袋駅に下ろし、和田とチエは探偵社事務所に戻った。和田はスタッフを集めようとしたが、出払っていてチエのほかは由比しかい。「これは匂いがするなぁ」と所長の和田がつぶやいた。「私 …