1-10 嵐の海外ツアー

 
「嵐の歌うメロディって、ほんとにいいわよね」
「大野君が言うように嵐のコンサートってまるでお祭りよね、お祭り気分で人を楽しくさせるのよね、すてきなノリのいいメロディと5人それぞれのキャラクター。それに勢いがあるから嵐とお客とのお祭りなのよね」と早苗は応えながら、二杯目のビールジョッキを飲み干した。
「はい、お待ちっ!!」と掛け声が店のキッチン奥のほうから聞こえてくる。焼いた魚やイカの香ばしい香りが漂っている。
「でもジャニーズって突然、発表することがあるのよね」
「そうらしいわね」
「今回、調べてみたんだけど、嵐のコンサートは国内では毎年行なわれいるんだけど、今年は海外も含めてのツアーが始まるらしいわ」
「本当?じゃあ、海外ツアーは今度で二度目になるんじゃない?」
「そう、2年前は台北とソウルでコンサートがあったのよ。そのときはタイでもコンサートを開催する予定だったんですって、でもそのときのタイの政情が不安定だという理由らしいけど、そのタイでのコンサートだけ断念したということらしいわ」
「日本ではどこなの?」
「今回のアジアツアーというのは、国立競技場をかわぎりに台北、ソウルのほかに上海とがが追加されることになっているらしいの」
「よく調べてるわねぇ」
「それで問題なのはチケットのほうなのよ」
「日本のファンを集って行くオフィシャルツアーは抽選だし、超人気だから当たるかどうかなんともいえないのよ。もし外れたら、自分でチケットを手に入れなきゃならなくなるわね。海外だとその地域で販売されるのが原則だから日本での入手はむずかしいの。だからどうしても行きたければ海外で販売されたチケットをどこかで出に入れる必要があるの。つまりジャニーズ事務所が主催するオフィシャルツアーに抽選で参加する方法ともう一つは自分でチケットも旅行の手配して行くことのどちらかなのよね。オフィシャルツアーは日本からのツアーだからチケット代金や旅行費用すべてが含まれているし、現地で嵐が来てくれてパーティもあるから楽しみよね。ただいい席で観たい人にとっては、席を選べないというちょつとひっかかる部分よね。でもツアーって楽でいいよね」
「パーティって?」
「2年前の台北のときには、会場を設定してくれて、そこに嵐のみんなが来てくれた上に、握手までしてくれたらしいのよ。それに記念のグッズがもらえるらしいわ」
「へえ、、そうなの」
「ねっ、おいしいでしょ?」
「コンサート会場でのお席はどんなふう?」
「う~~ん。そこはわからない」
「でもエレベーター式でつれてってくれるんでしょ?ツアーだから」
「そうなのよ。お席を考えなければ、やっぱりツアーがいいと思うよ」
「問題は抽選に当たるかどうかよね」
「私、考えがあって、調べてみてそのツアーを組む会社をつきとめたのよ」
「へぇっ、、どこにあるの?」
「有楽町。なので今度ちょつと行ってみてプッシュしてみるつもりなの」
「あらあら、積極的ねぇ、、、」
居酒屋特有の喧騒の中で二人は笑い出した。ビールジョッキの三杯目を注文した。
早苗は今年から嵐の大ファンになっていて、今回の海外のツアーにすべて参加したいというほどの意気込みだった。優子のほうはもともとはいろいろな劇場などを楽しむといった風情で、早苗ほど嵐に熱くはないけれど、ドラマや歌を見聞きしているうちに、早苗に誘われて嵐のファンクラブに入会した。入会すればいろいろな情報が得られるし、チケットの購入も申し込むことができると聞いていた。ただ国内ではなく今回のように数日間、海外へ行くとなると、主婦である優子は、その間、家庭を留守をすることになる。優子は夫と幼い女の子であるうむいとの三人暮らしである。
優子の夫の浮気調査は探偵社の今後の調査結果待ちだが、夫は浮気をしているとすれば、もし優子が嵐の海外ツアーに出かけて自宅を留守にすれば、夫はこれ幸いとするかもしれない。一人娘のうむいのほうは一緒に海外に連れて行ってもいいのだけれど、まだ幼いし、コンサートのような大きな音に触れさせたくないとも思うから、もしツアーの抽選に当たったら、うむいは実家の母のところに預けようかなと思っていた。
そのほうが父や母はきっと喜ぶに違いない。
こうして早苗の話を聞いているとオフィシャルツアーはチケットやホテル、飛行機代などが含まれているから楽だし、現地での嵐のイベントがあるから、それなりの楽しみもある。ただその抽選に当選するのはむずかしそうなのである。外れた場合、どうしても行きたければ、すべてを自分たちで手配しなければならなくなる。人気の「嵐」のことだから、抽選に外れた場合、自分たちでチケットを取得するとなると相当、高くなることだろうし、それにフライトや現地のホテルの空きを早めにキープする必要性もでてくる。

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