1-71 戦略

泉純一と浮気相手である若林奈美はクリーンシェア社で繋がっていたことが判明した。
「二人の幸せ研究所」では平行して純一の銀行関連についての割り出し調査も行おうとしている。
調べていくと純一の仕事についてはあるプロジェクトが進んでいた。
純一が経営するエアプリティ社と清掃関係の中堅会社のクリーンシェア社との契約の期日が迫っていることがわかってきたのだ。
最近の純一はそのプロジェクトについての技術的なアフターフォローをどうするかというミーティングのためにクリーンシェア社に呼ばれることが多いらしい。エアプリティ社が技術的な提案をし、クリーンシェア社が世に送り出す新製品「エアドゥ」は確かに画期的な商品らしい。
いままでの空気清浄機の多くは空気の汚れを集塵するためにフィルターを使う。しかしこの新製品はフィルターを使用せず、空気の汚れを電子エネルギーで焼き尽くして小さくなってしまうから基本的に長期間の集塵をする必要がない。重要なことは、室内の空気の汚れを取り去る清浄効果であるが、いままでの大手電器会社の販売しているものよりも数段あることが実証済みだった。そのクオリティだけでなく、埃だけでなくホルムアルデヒドなど多種の有害物質及び外部からのウィルスまで除去する能力が高いことが特徴だった。さらに発生するマイナスイオンは癒しの効果を醸し出し、肌に最適な湿度コントロールすることが可能だった。女性の間で話題になることだろう。換気機能も設置可能なのである。従来機器より最も小さく駆動部分がないかあるいは小さいので電気代が数分の一になり、フィルターの交換も要らないのでランニングコストが大幅に安くなる。そんないいことずくめの「エアドゥ」だから、価格も安く設定できるので特に家計を牛耳る主婦層や独身女性をターゲットにする商品になるという。この製品が市場に出れば、いままでの市場を席捲することになるだろうとエアプリティ社の社長である純一は自信満々だった。市場を席捲すれば、販売量が多くなり製造コストをさらに安くすることができるのだ。追随してくるであろうライバル会社を蹴落とすことができるプランだった。
純一の狙いはこれだけではなく、このプロジェクトを足がかりにしてエアプリティ社を大きく飛躍させることにあった。
{ 俺は織田信長になる。絶対に成功してみせる }純一はクリーンシェア社の担当者との会議を重ねるたびに自信を得ていた。
自分の会社はまだまだ小さい。しかし特許をもった技術力がある。それに比べればクリーンシェア社はこれからの企業であり販売力があるがこと空気清浄機については素人同然なのだ。
{ 名声などどうでもいい、実質をとればいいんだ } と純一は思った。
思い起こせば純一がクリーンシェア社にこのプロジェクトの提携を持ちかけるまでにはそれ相応の時間がかかったし、資金も必要だった。やはり技術的な裏づけがないならば、門前払いになる話なのである。時間をかけ何度も何度も試作品を作っては壊し、壊しては改良し、テストを繰り返しながら、やっとここまで辿り着いたのだ。もしかすると最初、対応してくれたクリーンシェア社の担当者が空気清浄機について素人だったからよかったのかもしれない。その後にも何度も持ち込まれてくるたびにその機能や効果がさらに向上し、その実証を見せつけられればクリーンシェア社は純一の話になびくほかはないのだ。純一の技術的なデーターの提示と実証の繰り返しの結果、クリーンシェア社の社長である清水を動かすまでになった。小さいエアプリティ社を経営する泉純一社長の野望、そして大手に上り詰めようとするクリーンシェア社の清水社長の考える世界戦略が合致したのだ。
そして、、、、そのかみ合わせとして重要な役割をした者が、、いた、 、、、、、

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