深刻な現実

1-154 深刻な現実
早苗は死の寸前に真実の「愛」を悟っていたに違いないと優子は想像していた。
それは優子の親友の早苗への想いを重ねた甘い考えだったのではないだろうか。
だがこのビデオ映像を見て推察していくと、早苗の身に迫っていた深刻な現実があったのだと思い至った。
お母さんがおっしゃるように早苗を拘束した犯人は当初、早苗の妊娠に気づいていなかったのではないだろうか。
おそらく早苗は身の危険を感じながらも気づかれないようにしていたはず。
早苗としては、ここをやり通せば解放されるかあるいは逃れられると思っていたに違いない。
早苗は犯人たちに対して特別に悪いことはしていないはずなのだから。
確かにミセスジュリアにとっては、早苗は憎い夫の浮気相手だったから、とっちめてやろうとしていたのかもしれない。

だが何かの事情が変わったのかもしれない。
早苗のほうは、まさか自分が拘束されたり殺されるなんて考えもしていなかったはずなのだ。
李ガンスが早苗に向かって「何カ月になるんだ!」と怒鳴っていて、その声に早苗は思わず自分のお腹を守ろうとするような仕草をしていた。
その前後に早苗を拘束した犯人たちは早苗の所持品や鍵やパスポートまで手中にした。

この前後からは計画的な動きをしている。
早苗になりすました替え玉は客船に入って何食わぬ顔をして早苗のスィートルームに入ったのだ。
そしてその部屋に置いてあったすべての荷物も盗んで最終地のシンガポールの港で降りた。
挙句の果てに日本にある早苗の大塚のマンションまで誰かを行かせて様々な物を盗んでいる。
そして早苗は殺されてしまった。
ミセスジュリアにとって、早苗は夫の浮気相手だったというだけのことではないのか❓
犯人たちは早苗が妊娠していたことをいつ知ったのかが疑問に残るにしても早苗を殺すに至る理由がわからない。
その妊娠を知ったとしても、いたいけな日本の女性を拘束、監禁、殺害する理由がまったくわからない。
こんなことまでされる早苗と犯人たちとの間に何があったというのだ?
ミセスジュリアと李ガンスは異常者だとしかいいようがない。
親友の優子も母親の恵子も早苗が身重だったことは知らなかった。
実際の早苗は、拘束されている初めの頃はさほど深刻には思っていなかったであろうが、拘束されていくうちに不安が増していったに違いない。
自分の不安と危険性が増していくにつれ、自分と自分が宿している子をどうすれば守れるかを必死で模索していたはず。
「あのう、、優子さん、、、」
「はい、、」
「共犯者の李ガンスという男はまだ捜索中なのでしょう?
それで、ミセスジュリアの夫はどうなっているのでしょうか?」
「はい、李ガンスも夫の王紅東とも警察からの取り調べは受けました。
王紅東とミセスジュリアのシンガポールの自宅なども相当厳しく捜索を受けたはずです。
それでこのビデオはミセスジュリアの自宅金庫の中から発見されたのです。
このビデオで早苗さんの事件の概要がわかったのです」
「でもミセスジュリアという女性が死んだ今、共謀者の李ガンスの行方がわからないままですよね」
「えぇ、失踪しているとのことです」
「私ね、、王紅東から直接、話を聞きたいのです。

早苗をどう思っていたのかを」
「私もミセスジュリアが船で死亡した際にシンガポール警察を通じて、ミセスジュリアの両親と王紅東に会えるように要請しました。
しかし私は彼らにとって会いたくない人物の一人でしょうから、いまだにどちらからも連絡はありません」
「とすれば、警察が李ガンスを捕まえるしかないということですね」
「そうだと思います」
二人は考え込んでいた。


その頃、、、、。
このコンビニエンスストアの周辺で変な噂が広まっていた。
「ねえ、さっき、、、女の人、あの家に入って行ったわよね」
「見た見た、きれいな女の人だったわよね」
「ねぇ、あそこのうち、コンビニやってるし、お金あるんだろうけどさ、、
娘さんが殺されちゃったんだよ、ねえ」
「そうよ、、その話で大変よねぇ」
「そうそう、息子が跡をとるらしいけど、、でもあそこの息子の嫁のこと知ってる?」
「何?」
「あのお嫁さん、由美さんていうのよ、その由美さんが、おかしいのよ」
「何が?」
「私、見たのよ。

この間、変な男とパチンコ店で話し込んでいたのを」
「誰?どんな人?」
「どこでどう知り合ったのか知らないけれど、パチンコ店でよく見かけるわね、、
年の頃は40前後かしら、少し目つきのきつそうな男よ。
着ているものもそうだけど何か崩れた感じの男に見えるわ」
「へぇ、、、?」

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