事実の発覚

1-152 事実の発覚
「実は、、、これを見ていただきたいのです」と言いながら、

恵子はハンカチを握りしめながら、リモコンのスイッチを押した。
しばらくするとテレビに画面が現れる。
「、、、、、、、、、」
「あっ、、、、これは!!!」
「これはシンガポール側から公式ルートを通じて私どもに渡されたものです。
ミセスジュリアという女性の自宅の金庫にあったビデオをシンガポール警察が見つけたということでした。
シンガポールと日本ではビデオの規格が同じとのことで手を加えていないというお話でした。
ここに映っている女と男については優子さんはご存じのはずです。
女性はミセスジュリアという人で、亡くなったということでしたね。
もう一人の男性は李ガンスという人で、ミセスジュリアとともに娘を殺害した犯人になります。
この二人によって娘は監禁されていたのです」
二人は無言のまま、じっとその動画を見つめていた。
「、、、、、、、、、、、、」
20分ほどするとビデオは終わった。
「お母さん、、もう一度、見ていいですか?」
「もちろんです」と恵子は再び、プレイのスイッチを押した。
優子にとって衝撃的な画面だった。
短い時間だったが、早苗と犯人のミセスジュリアとの会話が映っていたのである。
これは早苗がミセスジュリアの夫である王紅東との浮気の証言証拠としての映像を残そうとしているように見受けられた。
どうも早苗のよそよそしい態度が画像には感じられた。
早苗は王紅東との関係についてミセスジュリアと認めるとか認めないとか説明するような部分や言い争う言葉が一つもなかった。
英語と日本語の通訳を李ガンスが行っていた。
しかし、、、、、
そのビデオの終わり方のほうに衝撃的な場面があった。
李ガンスがビデオカメラを設置したまま早苗に近づこうとした場面だった。
その場面になると早苗が相手に対して身構えようとしているように見えた。
早苗は男が近づいてくるほどに、やおら両手を自分のお腹付近に持ってきている瞬間が映っているのだ。
そのときに「何カ月になるんだ」と李が怒鳴っているのだ。
しばらくするとこの動画は終了している。
優子は言葉が詰まった。
「このビデオであの子の身に危険性が迫っていたことを感じることができました。
でもあまりにも私たちにとっては衝撃が大きすぎます」
しばらく言葉が出ない恵子だった。
しばらくすると
「まだこのビデオのことは私たち夫婦しか知りません。
まだ息子夫婦にも見せていないのです。
それにこのことを話していいのかさえも踏み切れないでいます。
ただ娘の親友である優子さんにだけはお見せしておいた方がいいと主人が、何度か申しましたので、私も踏ん切りをつけました。
それで優子さんにここまでご足労いただいたのです」
「、、、そうでしたか、、こういうことだったのですね」
「この画面の終わり前までは、犯人たちは早苗さんに直接的な危害を与えていないように思います」
「そうですよね。
もしかするとこの時点では娘は助かるはずだったと私も思うのです。
娘とこの女の夫の王紅東という男と浮気したと証言すれば解放してやるとでも言われていたのだと思います。
それでそのことを信じて娘は自分の証言を映像に残すことに同意した。
この動画で娘は冷静に受け答えをしているように見えます。
このミセスジュリアのような高圧的で神経質な態度の人と言い争っても一つもいいことはないでしょうから。
しかし、、、拘束されたまま、、、、」と恵子は言葉に詰まった。
「そうですね。
お母さんのおっしゃりたいことはお察しします。
問題は、この動画で早苗さんがその浮気を認める証言をしたあとのことですね。
早苗に李ガンスが近づこうとしているときに早苗さんは身の危険性を感じたのか、自分のお腹の方を守るような仕草をしているところですよね。
女ならわかります。」
「はい、、、」
「おそらく早苗さんは、そのことを絶対に相手に感じられないようにしていたのだと思います。
しかし女ですから、身の危険を感じる時や何気ないところでつい、お腹を守ろうとすることを無意識にすることがあります。
どこかの時点で早苗さんが妊娠していることを見破られたということなのでしょう。
この画像には李ガンスは「もう何カ月になるんだ?」と怒鳴っている部分がありますから」
「そういうことだと思います。
娘は既婚者と浮気をするような子ではありません。
きっと男に騙されていたのだと思います」
「それで犯人はその証拠を調べるために日本にある早苗さんの大塚のマンションの部屋から、書類やパソコンなどを盗んだということでしょうか?
もしそうだとすれば早苗さんは、王紅東との浮気は認めたが妊娠は認めなかったとでもいうのでしょうか?
その証拠をとりたかった」
「、、、しかし、人はなんとむごいことができるものなのでしょうか、、、、」

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