恋と不倫

1-150 恋と不倫 
喫茶店ウファの店長、宇多田は何かせわしい気持ちがしていた。
学生たちに囲まれて話をしている優子はときに笑顔を見せながら会話を楽しんでいるように見えた。
しかし学生たちの人数が多いために宇多田は優子に声をかける機会がなかった。
恋い焦がれていた優子が、いつのまにか結婚して、手の届かない遠い存在になっていた。
恋い焦がれている人のことは、頭から離れないものである。
若々しい学生のときの姿が、美しい女になり、いつのまにか豊かさが加わった優子の姿が眩しく見えた。

あの日、優子と早苗がこの店に来たかと思いきや優子だけが用事ができたと見え、店を出て行った。

店に居残った早苗に宇多田は声をかけたのだった。

それは、優子への想いをなんとか早苗を通じて伝えてほしいという、いわば消極的ではあるが願うような気持ちで近づいたのだった。
そんな宇多田の恋の悩みを早苗のほうは相談を受けるというより、優子が結婚をしていたということの説明役に徹しようと思っていた。
しかし酒の勢いもあったが、そんな宇多田と早苗は関係を持った。
宇多田は早苗と話をしてみると彼女なりに仕事や恋の悩みを持っていたことを知った。
そうしているうちにお互いの関係が続いていたのだった。
すると思いもしなかった感情が変化していき、互いに心を寄せ合うようになっていったのだった。
そんな早苗がシンガポールで事件に巻き込まれて殺されたことに宇多田は心を痛めていた。
{もう少し時間があれば彼女が悩んでいたことの相談にもっとのれたかもしれない。もしかすると事件を防げたかもしれない}と悔やむようになった。
早苗がシンガポールへと旅立つ数日前にも宇多田は会っていたのである。
そのときに早苗は使っていたパソコン用のメモリーをベッドの脇に置き忘れたのだった。
そのメモリーは先日、優子たち数人と共に喫茶店ウファに訪れた際に手渡した。

これは愛早苗さんが、この店にきた際に忘れたものという嘘をついたのだった。
宇多田は早苗との関係を優子には感じられたくなかったが、シンガポールへと旅立つ前の早苗の様子を優子たちに話をした方がいいのではないかと悩んでいたのである。
しかし、もし優子たちにそのような話をしたとしたら、
{そのようなことを早苗が他人に話すことかしらと宇多田との関係に疑問を持たれるに違いない}
優子にそんな疑問を持たれるのが嫌で、いままで宇多田は優子に連絡することができずにいたのだった。
そんなとき、今日、優子が大勢の学生たちと一緒にウファに訪れた。

昔の学生時代の優子の姿を彷彿とさせていた。
そんなうつろな宇多田は優子と話す機会が持てなかった。
優子が勘定を済ませ、店を出た時にようやく宇多田は声をかけた。

「今度、お話したいことがあるので、お時間をとっていただけますか?」というのがやっとだった。
優子は一瞬、意外な顔をしたが「はい」と答えて急いで去って行ったのだった。
というのは優子は学生たちと話をしているときに愛早苗の母親から電話を貰っていたのだった。
「遅くなってもいいので、こちらに来ていただけないでしょうか」というのだった。
幸い、埼玉にある早苗の実家は池袋からそう遠くはない。
「わかりました」と一つ返事で、早々に学生たちと話を終えて喫茶店ウファを出たのだった。
優子は何となく、もやもやとした気分でいた。
久しぶりの早苗の母親である愛恵子からの電話であったが、その声に何か不安げでせわしいような感じがしていたのである。
{何かあったのかしら?、、、}
シンガポールでの報道では早苗の事件の原因は早苗とミセスジュリアの夫である王紅東との不倫のもつれということだった。
早苗を殺害した犯人の一人であるミセスジュリアは豪華客船ピュアプリンセス号の大株主であり、その船の中で新型インフルエンザウイルスの陽性反応が出た。
その日の深夜、彼女は自分の部屋のベランダから落ちて死んだというショッキング出来事だったのである。
その死亡したミセスジュリアがウイルスの陽性だっただけでなく、薬物反応まで出たというのだからシンガポールでは大騒ぎになった。
その後、愛早苗を殺害した共謀者と断定された李ガンスは行方をくらましてしまった。
捜査は難航していたのである。
そのニュースの話題性に日本のマスコミも飛びついた。
さまざまな媒体やインターネットなどで、それらの事件の憶測と噂が流れているのだ。
マスコミが騒げばさまざまな人々が動き出す。
となれば遅きに失してはいたが日本の警察も動き出していたのである。

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