1-99 新型インフルエンザとウイルスの変異

そのスタッフは、そのスィートルームのドアを叩いた。
「誰だ!」と部屋から聞こえる。

「スタッフです」
「ちょっと待って、、、あなた、医務室に入った?」ドアに向かってジュリアが怒鳴る。
「いいえ、、、」
「じゃあ、いいわ、入れて」とジュリアはその男に指示をする。
「失礼します」そのスタッフは部屋に入った。
「どうなっている?」ジュリアの横に立っているその男がそのスタッフに問いただす。
「ようやくドクターアデナウアーが見つかり、今は医務室で患者を診察をしているそうです」
「で、、、その結果は?」
「いえ、まだ診察をされているそうです」
「ここの医者は何と言っているんだ?」
「まだよくわからないと、、、ただ普通の風邪ではないと、、、」
「深刻なわけだな。レントゲン設備もあるだろう、、、それでもわからないというのか?」
「はい、、、、」

「もしその診察が終わってもすぐにその状況を船内にアナウンスするな。ドクターアデナウアーとここの医者にこの部屋に来ていただくようにしろ。その前に船長も」
「だめよ、、何を言っているの?、、ここじゃだめ、、、別の部屋にして、、危険だわ、、、、、
、あなたそんな無神経な、、、、、たとえ医者でも危ないわ、、、こちらが感染するかもしれないんだから、、、」
「わかりました、、別室が用意できましたら、お呼びします」とそのスタッフは言ったが、

「私の言っている意味、あなた、、、わかっているの?」
「?、、、、」
「それから私を呼ぶのよ。もちろん先生方も消毒をしているとは思うけど、、、部屋も消毒をして。わかった? それと、すぐに船長にここに来るようにと連絡して、、、、、わかったの?」
「はい、、」
「たいしたことはないと思うが、念のためにお客から質問がきても余計なことは言うな。そのことを医者も看護婦もスタッフみんなにもきつく言っておけ。憶測とうわさが広がると大変なことになる。そうなるとお前たちも大変な目に合うからな。わかったな?」
「私たちと船長と医者たちと話し合った後に、指示をするから」

「ちょっと待て、、それからその患者の母親にはちゃんと伝えておけ。この船の医者がしっかり看病するから心配しないでくださいと。それに船はシンガポールへと向かっている。明日、シンガポールに着けば、さらにしっかりした医療態勢があるから、ご心配いりませんと。わかってるな?」
「わかりました」そのスタッフは言い置き、そそくさとジュリアの部屋を出ていった。

2009年の春から、新型インフルエンザが世界的流行(Pandemic 2009HINI)となった。
一説には豚の間で流行していた豚インフルエンザとされ、その豚から人に直接感染し、それから新型ウイルスとして人の間で広まったとされている。
この流行が大きな問題になったのは流行初期にメキシコの感染死亡率が非常に高いと報道されたからである。実際には重症急性呼吸器症候群(SARS)のような高い死亡率ではない。
SARSは2002年11月から 2003年7月にかけて、中華人民共和国南部を中心にして、広東省や香港では8093人が感染し、37か国で774人が死亡した。
以前から専門家の間では、変異変化するウイルスの危険性がたびたびテレビマスコミを通じ警告されていたのである。

スタッフが去った後、ジュリアの部屋では話が続いている。

「もう酔いがさめちゃったわ、少し寒くなったわ。部屋を少し暖めて、、、。それにしても、あの女、、 どういう女なの?」
「、、、、、、、」
「もう一人は、、、連れ?、、、それとも他人?」

「わかりません。おそらく連れだと思います」
「あの女の写真はありますが、もう一人のはありません」

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