1-15 差別意識と金

「紛争や戦争になるとそれどころじゃない。噂やデマや風評どころか抑圧や暴力なんかが横行する」
「イスラエルとパレスチナやアフリカやアジア地域での報道を見ていると長い歴史上での問題を抱えていることと経済的紛争が背景にあるように感じるよな。その紛争の結果、相手を「許せない!目には目を」という仕返しを繰り返す抗争になってしまっている。、、、」
「「目には目を」だからいつまでもきりがないんだ。恨みは恨みを誘うしね」今後どう解決するかという冷静さの目が遮断されてしまうんだ。それにお金も深くからんでいるようだ」
「そうそう戦争が混沌としているっていうか、、、自分たちの恨みを含んだ権利を主張しているから、いつまでも終わらない、、、いつまでも殺し合いが続くことになるんじゃないだろうか?どうしたって怨みや憎しみは簡単には消えないからね」
「しかし目の前で肉親が殺されたら、、、、そりゃあ狂うよ。まったく。仕返しの仕返しの連鎖。、、お金と命と憎しみの複雑な怨みが生まれる、、、どうしていいかわからなくなる、、、、報道されているのを見るとそんなことを感じるんだよな」
「でも実際、もし私の目の前で肉親が殺されたとしたら、、、 」
「目の前でなくても恐ろしいことだわ、、、、、日本でも以前、H市のニュースになった母子殺人事件のことを思い出すけど、そのときご主人は「仇をうちます」というようなことを言ってた。それって正直な気持ちだと思うの、、、、女としては男というものを感じたわ。それが正しいとか正しくないとか言えなくても、そういう気持ちがなけりゃあ、男じゃないし、夫でもないと私、思うの。だから、もし目の前で肉親が殺されたとしたら、仇をうとうと思うのが当然の話よ」
「仇討ちか、、、」
「話は別かもしれないけれど、、、、2001年のあのアメリカの9.11、、、、あれはきっと、、、、 それなりの原因と理由があると私、思っているの。あんな大それたことが理由もなしに起きるはずないと思うの」と女学生が言い出した。そしていままで静かにしていた男が横からしゃべりだす。
「俺ね、争いの背景には宗教観の違いがあるんじゃないかと思う。まるで宗教と宗教との縄張り争いみたいな。自分たちの宗教だけが唯一の教えみたいな意識があって、その意識が行き過ぎていくと差別になり、排他的な種が植えられていくと思うんだよな」
「排他的な種?」
「うん、人の生活というのは人間が集まれば集まるほど、そこには生活共同体という意識が生まれるし、そのためにルールというか慣習というか、その延長線上に宗教も必要になったんだろうと思うんだ。その生活共同体を民族だとすると、その民族独自の宗教観もできてきて、さらに生活に浸透していく。もしそこに他からの宗教が伝わってくると少数派ながら同調する者もでてくるだろうけれど、多くは排他しようとする者も出てくるんじゃないかな。パレスチナだってイスラエルだって昔は身内みたいな民族同士だったって聞いたことがあったけど?ところが宗教観の違いが生じて、その差別意識が大きくなったんじゃないかと思うんだ。それがもともとの原因じゃないかと」
「人間の差別意識が根本にある?」
「俺たち日本人にとっての宗教ってのは、互いに助け合ったり、仲良くするためのものという意識があると俺は思うんだけど、、、そうえいえば彼らは自分の信仰する宗教が唯一、信じられるものとでも思っている感じがする。だいたいが唯一神だろう?日本はそうじゃなくてたくさんのいろいろな神様がいらっしゃるというような生活様式になっている。神様仏様あるいは他のキリスト教やマホメット教なんかも自由に存在しているし互いに排他的にしないどころか神様と仏様が一緒の境内に祭られているのは不自然に考えていない。だから日本人からみれば宗教観の違いで戦争を起こすなんて考えられないことだよな。日本人はいろんな宗教でも一度は受け入れてはみるからなぁ、、そして合わなければ離れていけばいいし、自然と廃れていくだけのことっていう捉え方が多勢だと思うよ、もしそうだとすると日本人なら世界平和のために貢献できるかも?」
「しかしその日本人だって危ないもんだぜ。ルールを守る、シャイな礼儀正しいと思われていた日本人が、アメリカに戦争を仕掛けて、友とすべきアジアまで行って戦争を起こしたんだ」
「いや、外国人からみれば日本人は何を考えているかわからないというのが本音かもね」
「当時の日本の軍隊や政府が悪いといってもそれを容認したのは、日本の大衆だからね、、、」
「問題はなぜ戦争までしなければならなかったのだろうかということなんだ」
「俺はその深いところには宗教観とか民族同士の差別意識がどこかにあって、そのイメージとともに経済の縄張り意識が働いて紛争や戦争が起きると思うんだよ」
「差別とお金?」
「なぜ戦争をしなければならなかったかを考えるとどうしても人間の心情まで問う必要がうのと思うわ。嫉妬と侮蔑感、差別感それに裏返して言うと優越感。そして色と金、権力と物質的な欲望を追い求める人間たちをつい浮かべてしまうのよねぇ、、」
「私は人間の欲望、そうだわ、、それが問題の根源に関係していると思うわ」
「バ~カ、欲望がなけりゃあ、女を求めねぇし、俺たちゃあ、存在しない」
学生たちの議論が続いていて、それとなく早苗と優子の耳に入ってくる。
「でもね、戦争って本当はどこの国の人でもしたくないはずなのよ。喧嘩と同じで、互いに傷つくことになるのはわかっているはず。戦争で怪我した人や病気になるし、お金もなく食べ物も薬も少なくなったら、どうすればいいっていうの?まわりの誰に助けを求めればいいっていうの?何のための戦争なの、、だいいち「人が人を殺す」なんて異常なことだわ、それにいつまでも自爆が続くなんて、同じ人間同士が殺し合いを続けるなんて、考えただけでもひどすぎる」
「それが戦争なんだよ殺し合いだよ。美化することではないけれど第二次世界大戦の日本の神風特攻隊は、いまのアラブなんかの自爆するのとは違うような気がしている。あのときの神風特攻隊はアメリカへの憎しみというよりも父や母のいる日本という国を護りたいという大義名分を持っていたからできたんだろうけれど、パレスチナとイスラエルの戦争はそれとはどこか違うように感じるよな。パレスチナの自爆は憎しみや怨みをどこに吐き出したらいいのかわからなくて、自分たちの憤懣をどこにぶつけたらいいのかわからいところがあるような気がする」

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