1-87 痕跡からの推理

「私は近々シンガポールに行こうと思います。早苗が行ったと思われるところに」
「賛成。お願いします」
「ただ今後のことだけど警察や何かで犯人が判明したとしても私たちがかたき討ちということはしないつもりよ。憎しみからの仕返しは憎しみの連鎖になる。こういうことはしない。
ただし可能な限りなんらかの方法をとりたいと思う」
「どんな方法?」
「わからないわ」
「優子のことだから、冷静沈着のわりに激しいものがあるのじゃないかな。さっき私たちが早苗のかたき討ちをしたいと言ったけど、早苗は相手を殺したいほどの憎んだはずだわ。
でも早苗の性格からしても私たちにそれを望んではいないと思う」
「あの早苗の手の組み方は犯人を示そうとしたのじゃないかと思うのよ」
「私もそう思うけど、そんなことをするのは不可能ということだったわよね。本人が必死になったとしても短い時間に手錠から両手を抜いて組むなんて不可能だわ。しかも肘から手先までなのだから、まるで自分の力で手錠から手が抜けないから、自らの力で肘から引きちぎるようにするなんて、まったくありえない。しかも両手。いかに必死になったとしてもそんなことは不可能。だとしたらやはり犯人が早苗の肘を切断して組み合わせたとでもいうの?これもなんの意味があるというの?、、、、、やるとしたら完全な精神異常だわ」
「いや殺人は精神異常よ」
「可能性がないとも言えない」
「でも犯人が早苗の両肘を切断したとしたら、切断面になんらかのかすかでも証拠が残るはずなのに両肘になんら痕跡がないと警察と解剖は言っている。それを信用すれば、切断もありえないことになる。それに両肩から両肘までの骨は体の側面から後部の方向に向いていた。と言っていた。本当なのか?遺体を引き上げる時に動いたのじゃないか?そのときに肘から先も動いた?それでもそうしたらあの手の組み方も崩れているはずだけど崩れていない。、、しかも両肘や両手だから。もし引き上げる時や運ぶときに遺体の骨の位置が多少崩れたとしたらどちらか一方に傾くことになると思える。しかし実際は、両肩から両肘までが体の両側面から両後方へと同じように向かっていると言っているし、、?、、、」
「しかも生きたまま海中に沈めている。だとしたら必死にもがいたはず。しかしその激しく動いた痕跡そのものがない」
「その肺の部分に残っていたものは肺ではなく、おぼれ死ぬ間際に吸い込んだ海水に含まれるプランクトンによって何日もかけて形成され、すでに肺が無くなってしまって、それにとってかわられた物だと判明した。だとしたらやはり溺死するときに息を吸おうとしたはずだと解剖は言っている。
つまり早苗は生きたまま海中に投げ込まれたはずなのにもかかわらず、息は吸おうとしたが、必死にもがかずにして、溺れ死んだということになる。生体反応として呼吸していたことは認めているはずだから、何か薬か何かを作用させて昏睡状態にでもさせないとそういうことができないはず」
「しかし矛盾がある。両肩から両肘までが体の両側面から両後方にそれぞれ向いていたなんて、しかもそこからさも切断されてでもいるかのように距離をおいて両肘から両手先まで体の前方付近であのような両手の組み方の形になっている。手錠にかけられていたはずなのに手錠から抜けて手の部分が組まれている。しかし両肘の部分は引きちぎられたり切断されているような形跡が骨の形や位置からありえないとも言っている」
「つまり両手だけ、最初から手錠から抜けていた?」
「薬を飲まされて意識不明にされたのちに手錠から外された両手を体の前で組まされて、そのあとに幾重にもロープを体中に巻き付けられて、両足のほうは足枷をされ、そして袋に入れて、重しを付けて海中に投げ込まれた。しかしそれでは両肘の部分が切り離されているようになっていることの説明ができない。まさか死んだ後に魚が両肘の部分を、、、してしまって、、、、そしていつの間にか両肘の部分が離れた。、、、とでも、、、?、、、」
「どちらにしても何か意味のある手の組み方に違いないわ。犯人がそうさせたのか、それとも早苗の意志でそうしたのか?、、、それとも、、、、」

よかったら、ぜひクリックをお願いします。
にほんブログ村人気ブログランキングへ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です