1-4 早苗のスケジュール


「10月17日(金)羽田→シンガポールのフライト済み。シンガポール市内にあるマンダリンホテ
ルに1泊の予定でチェックイン済み。
10月18日(土)チェックアウト済み。休日
10月19日(日)休日
10月20日(月)会社には、この日の休暇を届け済み。
10月21日(火)会社には、この日の休暇を届け済み。
ただ翌日から仕事が入っているため、この日から再びマンダリンホテルにチェックインして4連泊の宿泊予約済みだったがチェッインもキャンセルもなされていない。
10月22日(水)午前10時、シンガポールの取引会社Dragon社の担当者と愛さんはアポイン
トがありましたが、取引先から、約束の日時に愛早苗さんは来社していないし、連絡がとれない状態となっていることがわかりました。
Dragon社で愛さんはこの22日(水)から24日(金)まで仕事の予定でした。
10月25日(土)休日
10月26日(日)休日
10月27日(月)シンガポール→羽田、帰国予定だったが、フライトをしていないようです。
10月28日(火)当社へ出社予定でしたが、愛さんとは連絡が取れず不明です。
10月31日(金)羽田→ソウルのフライト予約済み。会社には事前にこの日の休暇を届け済み
。この日から2日(月・祝日)まで、ソウル市内の某ホテルに3連泊の宿泊予約済み。
11月 3日(月)ソウル→羽田の夕方のフライトを予約済み。会社には事前に休暇を届け済み。
11月 4日(火)出社予定         
11月14日(金)羽田→上海のフライトを予約済み。上海の某ホテルに3連泊を予約済み。
会社には事前にこの日の休暇を届け済み。
11月15日(土)休日
11月16日(日)休日
11月17日(月)上海→羽田のフライトを予約済み。会社には事前にこの日の休暇を届け済み。
11月18日(火) 出社予定
と如月専務は、早苗の予定表を読み上げたあと、愛早苗のご両親の方を向いて言った。
「彼女は10月17日、シンガポー市内のマンダリンホテルに宿泊し、予定通り翌日の18日(土)にはチェックアウトしています。出張前には同僚に18日から21日まで土日の休日と有給休暇を消化して現地で観光をすると言っていたそうです。
その後は10月22日の午前10時に取引先のDragon社での仕事のアポイントが入っておりまして22日から24日まで、その会社との仕事の予定でした。ですから、その前日の21日に再び
そのマンダリンホテルに4連泊の予約しておりました。ですが、その約束の22日にDragon社から「早苗さんが約束の時間に来ないが、どうなっていますか?」というお問い合わせが弊社
へ入ったわけです。それはおかしいということになって彼女の携帯に連絡をしてみたのですが不通になっていたのです。
そこで宿泊先のマンダリンホテルに問合せしてみましたところ、予約していたはずの21日にチェックインもキャンセルの連絡もなかったというのです。これはもしかすると彼女に事情ができたり、体調でも悪くなって、ほかのホテルかあるいは病院にでもいるかもしれないと考えまして探してはいるのですが、いまだに見つかりません。
それにしても彼女が理由もなく仕事の約束の日時をたがえるはずがなく連絡もないというのはおかしなことなのです。ご両親様もそうでしょうが、不安なのは彼女の携帯電話が不通になっていることです。私どもといたしましては念のため、彼女の東京のご自宅のマンションへうちの社の者を行かせたのですが、入り口のインターフォンでは返答がありませんでした。それでたいへん心配になりまして10月23日にご実家のほうに連絡をさせていただいたわけです」と説明した。
 「そうすると早苗さんは10月18日にマンダリンホテルをチェックアウトをしたあと、どこへ行くというようなことを言ってらしたのですか、ご存じの方はおられるでしょうか?」和田は尋ねる。
「はい、同僚には仕事の数日前にシンガポール入りして観光するとは言っていたらしいのですが、具体的にどこに行くというのは誰も聞いていないのです」
「ほう、誰も詳しくは知らない?ところで早苗さんは御社で、どういうお立場でしたか?」
「彼女は入社時は事務的な仕事が主でしたが、その後ソフトウェアの開発部門を希望され、見習いからはじめたのですが、めきめき上達されました。語学も堪能で、現在では開発部門から離れて、新しい取引先開拓のための営業活動を行うプロジェクトチームのリーダーまでになって活躍していただいております。プロジェクトチームは専門的な知識だけでなく、語学力や営業面でもそれなりの力がなくてはならないのですが、彼女はその点、技術面だけでなく人当たりがよく、機転の利くうってつけの人材だと会社は認めていておりました。いま彼女は部長になっておりまして、近い将来、常務の肩書きを用意していたくらいです。異例かもしれませんが」と如月専務はそう答えながら、先ほど読み上げた予定表を和田に手渡した。
「ほぅ、若くして常務候補ですか?」
「そうです。当社は実力主義的なところがありまして、彼女のことを高く評価していたのです」
「もしかすると今回のシンガポールでのお仕事というのは彼女1人だったのですか?」
「はい。彼女はDragon社とは日本でも現地でもすでに何度か仕事をこなしておりましたし」
「飛行機やホテルはどこで予約するのですか?」
「うちの近くに取引している旅行社がありまして、そこで出張する人は予約することになっています。支払いは会社持ちになるのです。もちろん個人的なものの支払いは別ですけど」
「失礼ですが、早苗さんがシンガポールへ出張される前後、御社のどなたか同じようにシンガポールへ行かれた方、あるいはほかの海外へ行っていた方はおられますか?」
「そこまでは考えておりませんでしたが、調べてみることにいたします」と如月専務は少しうろた
えたような様子を見せた。

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