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2017年1月27日にジャニーズの嵐は2020年12月31日をもってグループ活動を休止、停止することを発表した。

この物語は、その約10年くらい前から始まっていた。
愛早苗という女性から親友の泉優子宛に郵便物が届いた。
「嵐の2008年の台北公演では予想もしないアリーナのいい席のチケットが取れました。
だからそのコンサートでは嵐のみんなともバッチリ目が合ったし、超楽しかった。
次のソウルも上海もいい席が、なんとかとれそうなの。

優子もみんなも行けなくなって残念。
でもまた次の機会があるだろうし、落ちついたら一緒に行きましょうね。

しばらく忙しいけれど会えるのを楽しみにしています。

この郵便物に同封しておいたDVD (YouTobeにshotennokiでアップしておいたから見てね) は朝、台湾の台北の○○ホテルから嵐のメンバーが出てくるのを撮ったものです。

実は私もこのホテルに泊まっていたのよ。

この動画には松潤が映っていないけれど、先に会場に行ってたみたい。でもよくぞ撮れたでしょ。へっへっへ、、、ラッキーでした、、、、。それではまた連絡します」と手紙が添えられていた。
しかし愛早苗とは連絡がとれず行方不明になっているのである。
「これは早苗が台北で映したものをDVDにして、この手紙と一緒に送ってくれたものです。

YouTobeでも確認しました」と泉優子は説明した。

早苗からの手紙を読み終えた探偵社「二人の幸せ研究所」所長の和田は、さっそくそのDVDをビデオデッキに入れて見ることにした。
プッ、、、しばらくするとテレビ画面に現れる。
「これは、、あのジャニーズの嵐ですか?」
「そうです。嵐がARAOUND ASIAとして、日本の国立競技場をかわぎりに海外では台湾の台北、韓国のソウル、中国の上海の3ヵ所でコンサートを行う予定にしているのです。
すでに日本の国立と台北公演は終了しましたけれど、そのあとのソウルと上海のコンサートを彼女はとても楽しみにしているのです。

全部制覇するわよ」と言っていました。
この日、優子は早苗の父である愛啓介と母・恵子とともに探偵社「二人の幸せ研究所」を訪れていた。
「ジャニーズの嵐はすごい人気者で、こういう至近距離での場面はなかなか撮れないんでしょう?」
「そうですね、、、難しいと思います」
しばらく探偵社所長の和田と泉優子のやりとりを聞いていた早苗の父・啓介は、かぼそい声で話し出した。
「先日、娘の勤める会社から突然、電話がありまして、娘と連絡がつかず困っているというのです。

というのは、娘はシンガポールの取引会社先で仕事をする予定になっていたというのですが、約束の日時になっても娘が現地の会社に来社してこないというのです。
それでそのシンガポールの会社から「まだ早苗さんが来社してこない」ということを娘の日本の勤務先へ問い合わせの連絡が入ったそうです。それで勤務先の人が娘の携帯電話が不通になっていて連絡がとれないので娘のマンションまで行っていただいたとのことです。
しかし娘の部屋からは返答がまったくないというのでさらに心配してくださって、会社から私どもに連絡があったのです」と父の啓介は話し出した。
「娘は東京豊島区の大塚にあるマンションに一人住まいをしております。

私たち家族は埼玉に住んでおりますが、娘が海外に行く予定になっていたなんて聞いていなかったものですから、もしかすると娘がマンションで倒れているかもしれないと思い、急いで私たち夫婦で娘のマンションに行ってみたのです。

娘の部屋からは返答がないので大家さんに事情を話して娘の部屋のドアを開けてもらったのです。

やはり本人はいませんでした。

それで会社の人と相談して警察に届け出ることにしたのです。

警察官は一緒に早苗の部屋を見てくれたのですが、「特に不自然なところはなさそうですね。お話を伺うとシンガポールに行ってらっしゃるとのことですから、娘さんからの連絡を少しお待ちになってみてはいかがですか?〕とのん気なことを言っているのです。
私たちは、娘の勤務先とも相談し、娘の携帯電話が不通になっているし、至急、捜索をしてほしいと頼みましたけれど、しかし警察からはなんの連絡もなく、いたずらに日が過ぎているのです。

娘との連絡がまったくとれないので心配でしょうがありません。

知りえるところには連絡をしてみました。

ここにいらっしゃる泉さんは娘の親友で、先日、娘からの郵便物を受け取ってらしたことがわかったのですが、今のところ、ほかは誰も娘がどこにいるのか知らないのです。

会社はコンピューター関係の仕事をしておりまして、説明していただいたのですが、娘は仕事でシンガポールへ行くことになっていて、現地のホテルには一晩、泊まっていたことはわかったそうです。しかしそのホテルは、すでにチェックアウトしたとのですが、その後のことがよくわからないと言うのです」話し終わると目の前の湯飲みを取り上げ、一気に飲み干した。

啓介はあまり熟睡できていないような表情をしている。

隣に座っている妻の恵子は心細そうな顔で探偵社所長の和田を見つめている。
実はこの探偵社「二人の幸せ研究所」という探偵社は、早苗の勤めるオフィサーソフト社と取引関係があった。自分と他人、男と女、子と家族人間関係、雇用関係などを組織工学的な問題ととらえ調査し解決するところである。
泉優子は、夫の浮気について親友の愛早苗に話をしたことがきっかけで早苗が優子にこの探偵社を紹介してくれたといういきさつだった。しかし皮肉にも今度は優子が早苗の行方を捜すために、早苗の両親とともにこの探偵社を訪れることになってしまったのである。
「となるとまだシンガポールあるいは海外のどこかにいるかもしれないというわけですか?」
と和田は切り出した。
「そうなんです。シンガポールの会社の人の言うには、早苗はシンガポールのホテルには一泊しましたが、そこはすでにチェックアウトをしていたということです。その後、数日おいて同じホテルに再び予約していたはずだとのことですが、そのホテルにはチェックインをしていないということでした。それに予定の10月24日のシンガポールから羽田への帰国便を予約していたにもかかわらず、早苗さんは乗っていないらしいのです」
「早苗さんは責任感が強くて仕事をほったらかしにするような人ではないし、会社にも連絡をとらず無断でキャンセルするようなこともしたことがないと言っていましたし、だいいち彼女の携帯電話が不通になっているのは、身に危険なことが起きているとしか私には思えないんです。ただ何らかの事情があって連絡できないということもありえるのでしょうけれど、、、、」と優子は早苗の父、啓介のほうをちらりと見たあと和田に向かって言った。
「ご事情はだいたいわかりました。どちらにしても早苗さんのマンションは近いようですし、これから行ってみましょうか」と和田は言いだした。

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